基調講演の後半では、マイクロソフトパートナーやユーザー企業が先進事例を発表した。
北陸からAzureで動くネットバンキング
金沢市に本店を置く北國銀行は、6月にマイクロソフトやFIXERと共同で、Azureを基盤とする国内初のインターネットバンキング「北國クラウドバンキング」を2018年夏から提供する発表した。
同行は、これまでMicrosoft製品を活用した「働き方改革」などに取り組み、この10年間で年間の残業代を約10億円から約3000万円に削減したほか、2014年の本店移転時には、段ボール箱で約1万4000個分の紙文書を廃棄し、スマートデバイスをフル活用したペーパーレス化を断行した。
北國クラウドバンキングの開発は、こうした銀行業務の変革に続く新たなステップになるという。基幹の勘定系システムとパブリッククラウドのAzureを組み合わせることで、「オンライン to オフライン」(O2O)のマーケティングとサービスを推進。利用者の利便性向上と業務効率化による営業店サービスの品質の向上を図るという。
北國銀行 代表取締役 専務取締役の杖村修司氏は、「『デジタル変革』への取り組みを通じて利用者の利便性を高め、地域の経済を盛り上げていくのが、地方銀行の役割。北陸から全国に広げていきたい」と話した。FIXERは、Azureのマネージドサービスなどを手掛け、「北國クラウドバンキング」ではシステムの設計や構築を担当する。
多くの銀行が提供するインターネットバンキングだが、パブリッククラウド基盤は北國銀行が国内初となる
西陣織の経験をIoT基盤に直結
ソフトバンク・テクノロジーとミツフジ(京都府精華町)は、ウェアラブルIoTデバイス「hamon」の取り組みを披露した。
ソフトバンク・テクノロジーは、グループ企業のミラクル・リナックスやサイバートラストと「Secure IoT Platform」を展開する。米Rambusとも提携し、IoT機器の製造段階に電子認証基盤を組み込むことで、高いセキュリティレベルでの機器とIoT基盤間における通信の保護や、無線経由でのアップデートを可能にした。
ミツフジは西陣織の工場として創業し、繊維の開発や加工の強みを持つ。IoTは専門外だったが、ウェアラブルIoTを新規事業に位置付け、「hamon」を開発。hamonを着用するユーザーの極めてセンシティブな生体情報を安全に扱えるプラットフォームとして「Secure IoT Platform」とAzureを採用したという。
ミツフジ 代表取締役社長の三寺渉氏によれば、国内の繊維業界は厳しい状態が続き、ウェアラブルに活路を見い出したいとの希望があった。ウェアラブルデバイスの展示会でソフトバンク・テクノロジーと出会いがきっかけで、参入を果たすことができたという。
ウェアラブルデバイスは一時のブームが去り、先行きが不透明な状況にあるというが、「さまざまなIoTの中でもウェアラブルは唯一、生体情報を収集するためのアナログデバイスが必要な領域。あらゆる業界の人々との協力をなくして、“糸からクラウド”につながるソリューションは成し得なかった」(三寺氏)とのことだ。
ソフトバンク・テクノロジーは、4月に発足した「セキュアIoTプラットフォーム協議会」にも参画。取締役兼常務執行役員の眞柄泰利氏は、「標準化された安全なIoTの基盤を日本から世界に展開することで、IoTに関わる組織が付加価値の創造に注力できる環境を目指している」と説明した。
「糸からクラウドにつなぐ」ミツフジのウェアラブルIoTデバイスの仕組み