VMwareはEMC時代から、「傘下にありながら独立性を維持する」という特別な存在だった。1年前のDellによるEMCの買収により、Dell Technologiesのメンバーとなった現在も、HP/Hewlett Packard Enterprise(HPE)、LenovoなどDellやDell EMCのライバルとの関係を継続している。”親分”のMichael Dell氏(Dell TechnologiesのCEO)も、これを容認しているようだ。
8月末に米ラスベガスで開催されたVMworldで、VMwareはパブリッククラウドAmazon Web Services(AWS)との提携に基づく「VMware Cloud on AWS」の提供を、米国の西部リージョンで開始したと発表した。AWSのライバルIBMとは2016年に提携済み、IBMとはIBM Cloud上でVMwareの「VMware Cloud Foundation」をはじめとしたソフトウェア技術が動く提携を2016年にかわしている。
VMwareのクラウド戦略は、1)プライベートクラウドを簡単に、2)主要なクラウドプロバイダとの深い協業、3)VMware Cloud Partner Networkの拡大、4)クラウドサービスポートフォリオの確立の4つの柱を持つ。
クラウドだけではない。今年のVMworldでは、コンテナでも大きな進展を迎えたーー「Kubernetes」でDell Technologiesの一社であるPivotalと協業した「VMware Pivotal Container Service(PKS)」を発表したのだ。ここでは、Pivotalを通じてGoogle Cloudと協業した。VMworldではGoogle CloudからSam Ramji氏を招き、前日にAWSのCEO、Andy Jassy氏が立ったのと同じステージに立った。
Gelsinger氏とAWSのCEO、Andy Jassy氏
会期中、Dell EMCからハイパーコンバージドインフラ製品のアップデートを発表した一方で、HPE、Lenovoらも発表した。例えば、HPEはコンポーザブルインフラ「HPE Synergy」をVMwareのプライベートクラウド構築基盤「VMware Cloud Foundation」をサポートすることなどを明らかにしている。
VMwareはまた、エンドユーザーコンピューティング(EUC)分野でHPとの提携も発表。VMwareの「Workspace ONE」をHPの「Device as a Service(DaaS)」の技術プラットフォームに加えるとした。Workspace ONEはID管理、モバイルエンドポイント管理のAirWatchなどの技術を統合し、アプリケーションやエンドポイントを管理できるスイートで、HPのDaaSはエンドポイントデバイスのライフサイクル管理だ。今回の提携により、HPのDaaSのエージェントはWorkspace ONEの情報からもメリットを得ることができるという。Dell TechnologiesのPCカンパニーであるDellとは提携済みだ。Google Chromebookとも8月末に提携している。
Michael Dell氏は2016年のVMworldに登場し、DellがいかにVMwareを重視しているかを示した。買収完了前だった去年は”サプライズ”としての登場だったが、今年は2日目の基調講演にVMwareのCEO、Pat Gelsinger氏とともに登場。集まった約2万人の顧客やパートナーを前に、Dell氏は「VMwareは独立したエコシステムを持つ。これがVMwareの採用につながっており、今後も継続する」と述べた。
Gelsinger氏も「VMwareにとって良いことは、Dell Technologiesにとっても良いこと、という認識で一致している」と述べる。HPとの提携などを暗に指しながら、「Dellにとっては(競合と協調の)Co-petitionになるものもある」とGelsinger氏が述べると、Dell氏は「理解してるよ。心配しなくていい」と笑いながら肩を叩く場面もあった。
Pat Gelsinger氏とMichael Dell氏。お互いの表情も柔らかくなった。