Lourens氏は「われわれは、アジャイルの価値が理解してもらえるよう、結果についての透明性を保っている。私はあらゆる議論の場で指標を共有するようにしており、チームとしてもその指標を用いて、継続的に改善を進めている。指標による評価がなければ、結果がこれまでと同じなのか、良くなっているのか、悪くなっているのかを判断することが難しくなる」と述べたあと、IT部門がほかの部門と、どのようにビジネス上のメリットに関する情報を共有しているかについて説明した。
「エンジニアや製品スペシャリストを含む、私のチームの一部のメンバーは、進捗状況や結果について話す代わりに、社内向けのニュースレターを作って、よい点と悪い点の両方を論じた。これによって会社のあらゆる人たちに、アジャイルの目的と、アジャイルの手法を使って仕事をすることで培われてきた、従業員エンゲージメントの深さが伝わった」(Lourens氏)
メリットを会社全体に広げる
実際、IT部門でのアジャイルのメリットを認めたほかの幹部は、自分たちの部門にも同じ原則を適用することに前向きになっているという。Lourens氏とIT部門のリーダーシップチームは、この導入プロセスを支援するため、人事部門やマーケティング部門を含む主要な事業部門に対して、アジャイルに関する高度なコーチングを行っている。
人事部門は毎日スタンドアップミーティングを行い、プランニングポーカーを使って目的や進捗状況を評価している。Lourens氏によれば、人事部門は従業員のメリットの再評価を行うプロジェクトや、人材を発見する新たな方法を見いだすプロジェクトを進めているという。
「私は最初に、事業部門の全員に対して、アジャイルの原則と、それらの原則がどんな分野にも適用できることを伝えた」と同氏は語った。「人事部門はプロジェクトを実施し、何がうまく行っており、どこで改善が必要かを毎日話し合っている。アジャイルの原則を、自分たちに合った形で適用している」
Lourens氏は、人事部門はIT部門からの支援を受けることについて、非常に前向きだと述べている。IT部門は現在、マーケティングチームがアジャイルの手法をどのように生かすかを模索する作業を支援しており、まず問題点と将来集中すべき領域を特定するための振り返り作業から始めているという。同氏は、アジャイルの原則はあらゆる事業部門で活用できると考えている。
「ただ自分の仕事をやるだけなら簡単だ」とLourens氏は言う。「コミュニケーション不足や、誰がどの領域の仕事を担当しているかについての理解不足で、多くの時間が無駄になっている。十分に気をつけなければ、仕事が重複してしまったり、最悪の場合、仕事に穴ができてしまう。毎日コミュニケーションを取ることで、大きな違いが生まれる場合がある」
Lourens氏は、重要なことは、ほかの事業部門がこの新たな働き方を実際に取り入れたことだと述べている。ただし同氏の考えでは、働き方の変革はまだ緒に就いたばかりだという。同氏は、IT部門やその他の部門が働き方を最適化し、事業部門が見いだしたチャンスを生かせるようにするには、もっとできることがあると述べている。