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内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」

イノベーション推進組織の活動

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2017-09-13 07:30

 前回「IT部門内にイノベーション特区を創ろう」では、イノベーションの創出・推進のために社内に特区を設けることを提案しました。また、昨今ではデジタル技術を活用したイノベーションの創出やデジタルビジネスの推進のために、組織や担当者を設置する動きが活発化しています。今回は、こうした取り組みを成功に導くための活動について考えます。

デジタルビジネス推進組織設置の動き

 ITやデジタル技術を活用したビジネスイノベーションや新規ビジネスの創出への取り組みとしてタスクフォースを立ち上げたり、専門組織を設置したりする動きが多方面で見られます。その形態としては、IT部門内にデジタルイノベーションの創出を担う小規模なチームまたは担当者を設置する、事業部門が主導する、あるいは、これらとは別にデジタルイノベーションを推進する専門組織を設置するなどいくつかのパターンがあります(本連載「IT部門はイノベーション組織となれるのか」)。

 こうした動きは始まったばかりであり、これらのどの形態が良くて、どれが悪いというものでもなく、ビジネスにおけるITとの親和性や業種によっても適合する形態は異なります。しかし、社内各部門から精鋭を集めたタスクフォースを結成するなどの取組みにおいて、推進メンバーが従来業務との兼務である場合は、メンバーが多忙である、権限が与えられていない、既存事業部門の協力が得られないなど、さまざまな理由によって活動が停滞する状況が散見されます。

 やはり、本気でイノベーションを推進しようと考えるのであれば、専任のメンバーを置き、明確な組織ミッションを与えることが有効と考えられます。

デジタルビジネス推進組織の役割

 それでは、デジタルイノベーションを推進する組織に求められる役割と活動とはどのようなものでしょうか。先述の形態のいずれの場合においても、調査研究活動、提案・推進活動、社内環境整備活動の3つの活動が必要と考えられます(図1)。

図1.デジタルイノベーション推進組織に求められる活動
図1.デジタルイノベーション推進組織に求められる活動

 調査研究活動:イノベーションを担う組織は、調査研究(R&D)の役割を担うことが期待されます。先進事例、技術動向、市場動向、標準化に関する趨勢などITやデジタル技術に関する調査研究だけでなく、自社が所属している業界の動向、社会・産業全般の動向、市場や顧客の動向などの幅広い分野に対してアンテナを張り巡らせることが求められます。事業部門が主体となってイノベーションを推進する場合は、こうした調査研究の結果をもとにベンダーや技術の選定において専門家としてのアドバイスを提供することも重要な任務となるでしょう。

 提案・推進活動:具体的なイノベーション推進の中心となる活動であり、この組織が能動的に社内に働きかけるものです。調査研究活動で得た知見をもとに、経営者や事業部門に対して気づきを与えるような啓発的な情報発信を行ったり、ビジネスにおけるデジタル活用の適用可能性を模索したりします。

 AIやIoTなどの先進技術の活用機会を発見して、ビジネス現場に提案することも考えられます。また、ハッカソン/アイデアソンの開催、ベンチャー企業との協業、ITベンダーとのPoC(コンセプト検証)の実施など、外部との連携を促進することも有効な活動といえます。

 社内環境整備活動:多くの企業では、イノベーションの創出・推進に対する環境が十分に整っているとは言い難い状況です。イノベーションを具現化していくためには、社内のリソース(人、モノ、金)を確保し、動かしていかなければなりませんが、そのための制度や体制が確立していない場合は、それを変革しながらイノベーションを推し進めていく必要があります。

 また、イノベーションに対する意識や企業風土を醸成することも重要な活動となるでしょう。多くの企業にとって、イノベーション人材の確保と育成は重要な課題となっていますので、イノベーション推進組織内の人材だけでなく、会社全体のデジタル・リテラシーの向上も重要なテーマとなります。(本連載「イノベーションに求められる人材像とは」)。

 もちろん、すべての活動を短期間で立ち上げることは困難ですが、初期段階にはこれらのどの活動を中心に据えるかを検討することが推奨されます。

内山 悟志
アイ・ティ・アール 代表取締役/プリンシパル・アナリスト
大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は、大手ユーザー企業のIT戦略立案のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。最近の分析レポートに「2015年に注目すべき10のIT戦略テーマ― テクノロジの大転換の先を見据えて」「会議改革はなぜ進まないのか― 効率化の追求を超えて会議そのもの意義を再考する」などがある。

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