ただこのように、変化が重視されるようになったことで、一部の専門家は、CIOが最高デジタル責任者や最高データ責任者などの新たに登場してきた幹部職に立場が逆転される可能性があると論じ始めている。これらの新たな役職の重要性が増してくると、これからのITプロフェッショナルは、将来的なキャリア目標を達成するには、CIOになることを避けた方が有利だと考える可能性があるというわけだ。
しかし、Mitchell氏はそのような見方はしていない。同氏は、デジタル変革で先行するために最高デジタル責任者や最高データ責任者などの役職を設けている企業があるという話は聞くものの、CIOが変革を推進する際の得がたい経験の方が貴重だと考える企業の幹部もいると話す。同じようにITリーダーも、現任の技術者がデジタル時代にも才能を生かせるような配慮をすべきだ。
「これはあまりにも大きな問題であり、安易に一般化することはできない」とMitchell氏は言う。「大企業の取締役会は、自分の会社のITリーダーに何ができ、何ができないかを把握できるだけの洞察力を持っているだろう。CIOの役割は、次世代のITリーダーの能力が、経営陣の要求に応えられるようにすることだ」
組み立て、統合、評価を重視するITリーダーを育てる
BoxのCIOであるPaul Chapman氏も、Mitchell氏と同じように、デジタル変革を進めるためには、経営モデルを再検討する必要があると考えている。IT分野の上級職位を目指すこれからITプロフェッショナルは、変化の規模を認識し、デジタル時代における企業の生き残りを支援できる能力を身につける必要がある。
「今日では常に変化し続けることが常態化しており、ITプロフェッショナルとしての競争力を保つためには、常に自己改革を続ける必要がある」とChapman氏は述べている。「ITプロフェッショナルは多くの意味で、破壊的な変化に対応するためのマクロ的なスキルをすでに身につけている。スピードと機動性が重要な今日の世界では、過去を捨てて変化に適応することに対する意欲が、次世代のIT人材の重要な基本スキルになる」
Chapman氏は、次世代のデジタルネイティブは、GoogleやAmazon、Appleなどの企業に学びながら育ってきていると語る。同氏は、そういった新しい世代は、今よりもはるかにオープンで、ソーシャルで、協力的な、新しい働き方のスタイルを生み出すはずだと考えている。CIOはそれらの人材が、新しいITプロフェッショナルのスタイルを発展させる立場、つまりITリーダーになるのを支援しなくてはならない。
「かつてITの世界では、多くの分野の技術的な専門性を身につけることが重要だったが、今日では、差別化できることと、成果を上げることが重要になっている」と同氏は言う。「今身につけるべきなのは、ものを作るスキルよりも、ものを組み立て、統合し、評価するスキルだ。ITプロフェッショナルは、技術的なスキルよりも価値の高いアクティビティが重視されるようになっていることを認識する必要がある」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。