古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」

HPE開発部門におけるDocker導入事例--3つの決意表明へ

古賀政純(日本ヒューレットパッカード)

2017-09-26 07:15

 こんにちは。日本ヒューレットパッカードのオープンソース、Linuxテクノロジーエバンジェリストの古賀政純です。前回の記事では、DockerfileによるIT基盤構築や開発部門における開発の時間短縮についてご紹介しました。

 DockerのイベントでもIT基盤構築や開発に関する効率化のユーザー事例が多く発表されていますが、HPEの開発部門も、Dockerを活用したIT基盤を社内に提供しており、開発の効率化を実現しています。

 今回から、Dockerを採用したHPEの開発基盤事例について、システム構成などを交えながら数回にわたる連載でご紹介します。IT基盤導入の意思決定者、IT運用部門、開発部門の方が、Dockerを使った開発基盤を導入する上でどのような点を検討すべきなのかを決める際の一助となれば幸甚です。

HPEのIT基盤の刷新

 HPEでは、全社IT基盤を統括しているHPE IT部門があり、社内システムや社外ウェブシステムなど、数万人規模で利用する全世界のITシステムを統括しています。HPE IT部門は、数年前から世界中のデータセンターの集約、IT基盤の消費電力の削減への取り組みなどに加え、オープンソースやDockerコンテナなどの新技術を取り入れたIT基盤の刷新も行っています。

 また、HPE IT部門は、研究・開発部門や製品の開発部門などにも仮想化基盤やクラウド基盤の提供を行っています。その中でも、今回は、ソフトウェア製品の開発部門におけるDockerを活用したIT基盤刷新事例をご紹介します。

HPEにおけるDocker採用以前の開発環境における課題とは?

 Docker採用以前の米国HPEの開発部門では、開発環境用の物理サーバ(旧式のHPE BladeSystem BL460c Gen8を使用)上にサーバー用OS(LinuxやWindowsなど)や仮想化ソフトウェアをインストールし、テスト用のコードや品質分析用のコードを配備していました。

 しかし、HPEでは、物理サーバーの設定に加え、OSのインストールやテスト用コードの配備作業などが自動化されておらず、管理が非常に煩雑になっていました。通常、ソフトウェアは、様々なコードの部品(一般に、モジュールと呼ばれます)で成り立っています。

 それらの部品は、開発部門で常に更新されます。しかし、部品の更新が行われると、それに伴い、ソフトウェア全体として仕様どおりに動作するかどうかのチェックも必要になります。また、ソフトウェア製品でサポートするOS環境やモジュールが稼働するためのライブラリなどの構成の組み合わせは、膨大な数にのぼります。そのような環境の構築をすべて人間の手で1つ1つ手動で構築するのは、非現実的なのです。開発部門も、なんとかこの煩雑な作業を自動化できないか、頭を悩ませていました。


図. Docker採用以前の古い開発環境のシステム構成

今回のHPE事例で取り扱う開発対象のソフトウェア

 今回の事例で取り扱う開発対象のソフトウェアは、「HPE OneView」と呼ばれるハードウェアの統合管理・自動化ソフトウェアです。HPE OneViewは、システム管理者がハードウェア基盤を管理するための様々な機能を提供します。HPE OneViewは、「テンプレート」とよばれるソフトウェア定義型の「設定手順が記されたファイル」を使用してデータセンター内の物理機器の設定、制御、管理、監視を行います。

 主に、サーバ、ストレージ、ネットワーク機器全体のデータセンター保守、および、管理業務を自動化するために使用されるソフトウェアです。このようなエンタープライズ向けのアプリケーションでは、ハードウェアを含めた機能テストを徹底的に行う必要があり、テスト内容に基づいて、コードのリリース管理、複数の開発者によるコードの承認の仕組み、開発したコードや文書のバージョンの追跡などができる開発環境を用意しなければなりません。


図. 今回のHPE事例で取り扱う開発対象のソフトウェア「HPE OneView」

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