インターネットショッピングなどデジタル化は物流に大きな影響を与えているが、自らもデジタル技術を活用することで新しい物流を探っているのがドイツDHLだ。倉庫、配達などでAR、ドローン、IoTといった最新技術を活用して新しい物流を模索している。
DHLは世界220カ国で展開しており、さまざまなサイズのパッケージを海路や空路、そして陸路では列車やトラックと、さまざまな手段で届けている。2020年までの成長戦略は”Focus.Connect.Grow.”で、既存の強みへの集中(フォーカス)、組織内の知識のコネクト(人材)、新しい市場セグメントでの成長の3つを掲げている。
Deutsche Post傘下のDHLで最高情報責任者(CIO)兼最高執行責任者(COO)を務めるMarkus Vos氏は、「物流は生活に不可欠。1000年以上の業界だが、とてもエキサイティングだ」という。Vos氏ははIoTで提携しているHuaweiが9月初めに中国上海で開催した「Huawei Connect 2017」の基調講演でゲストスピーカーとして登場した。

DHLのCIO、Markus Vos博士。「2000年にFortune 500にランクしていた企業の5割が圏外になったり消えていった。デジタル化は生きるか死ぬかの問題だ。素早く反応しなければ生き残れない」と危機感も垣間見せた。
物流が注目されている証拠として、ベンチャーキャピタルによる投資の増加がある。Vos氏によると、2010年からの5年間の投資額は120億ドル、約10倍で増えているという。
「”Indsutrie 4.0”に象徴されるように、デジタル化はサプライチェーンを変えており、物流も大きな変化を迎えている」とVos氏。倉庫管理システムなどのシステム化を常に改善しており、数週間かかっていたような作業が時間レベルに短縮されているという。インフラではクラウドの活用も進めており、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドを構築している。
物理的な作業の効率化も進めている。
最初に紹介したのが、作業員について回るロボット”Thouzer”だ。作業員は棚から荷物を探しThouzerに入れる。これまでのようにカートを押す必要はなくなり、「作業の正確さとスピードに専念できる」とVos氏、現場で大きなインパクトをもたらしているという。「ロボットと人間がコラボレーションできる」と述べ、(現時点では)ロボットが作業を奪っているのではないことを強調した。

作業員の後ろを付いて回るThouzer。

Vos氏はThouzerとともにステージに登場した
次に紹介したのはウェラブルだ。欧州でリコーなどと共同で”Vision Picking(ビジョンピッキング)”としてパイロットを進めている。オーダーをピックアップする担当者がメガネ型のARデバイスを利用してログイン、次にトローリーの情報をスキャンすると、ピッキングする箱がどこにあるのかなどが表示される。指示通りに箱を手にとるとデバイスがスキャンしてチェック、次に進むことができる。