これまでは紙とペンでチェックしていたのがハンズフリーでピッキングできるようになり、生産性が上がり、エラー率も減ったという。デバイス側ではUbimax、Googleらと提携している。
ARデバイスを装着したスタッフはこのような画面を見ながら作業できる。ハンズフリーになり、タスク情報が視覚的に表示されるので、正確さとスピードも上がるという。
ARスマートグラスをかけるVos氏。
また、2年前から進めているというドローンについても報告した。小包を抱えたドローンが、ライン川を越えて運ぶ実験から開始、その後規模を拡大しており、現在南ドイツの山間の町で山を越えて配達する段階まできているという。
距離は8.3キロメートルを実現しており、小包は初回実験時の1.2kgから2kgに増えた。速度も時速43kmから70kmにアップしている。「さらなるテストをやるための許可を待っているところだ。ドローンは今後、拡張させていく」とVos氏。配達だけでなく、倉庫の写真を撮り在庫管理にも使っているという。これまではパレットを取り出すなど1日がかりの作業だったが、ドローンでは数時間で終わるとのことだ。
南ドイツの山間地帯でDHLが行なっているドローン配達。DHLでは”DHL Parcelcopter(パーセルコプター)”として実験を続けている。
物理的な作業ではないが、ブロックチェーンにも着目している。「ユーザーは常に正しい製品、本物の製品かを知りたいと思っている。例えばライフサイエンス製品のシリアライズ化などに使えるだろう」と期待を寄せた。
なお、消費者の利便性という点では、ドイツで留守中の消費者の車のトランクに配達するサービスもスタートしている。環境では、DHLは2050年までに二酸化炭素の排出量をゼロにするカーボンゼロを目指しており、ドイツ・アーヘン大学とカーボンフリーの電気自動車「Street Schooter」を開発した。既に3000台がドイツの街を走っているが、パートナーの要請を受けて外部への販売も行なっているという。「物流のDHLが自動車業界に参入した」と笑う。
Huaweiとは現在、中国でサプライチェーン事業部の工場向けサービスで共同プロジェクトを進めている。NB-IoTを利用したIoTシステムを構築、部品を積んだトラックが最短の待ち時間で納品できるヤード管理システムの実験だ。
部品を運ぶトラックの運転手は、工場敷地内に到着するとアプリで”チェックイン”する。するとシステムより番号と予想待ち時間がプッシュ通知される。システムは常時ドックの状況をスキャンしており、利用できるドックがあればそれを運転手に知らせる。
これにより、トラックの運転手の待ち時間は50%削減できたとのこと。また工場側も部品がないために製造がストップすることがなくなり、優先順位をつけることで部署のニーズにリアルタイムに応じることも可能となった。
Huaweiと進めているNB-IoTを利用したヤード管理システムのイメージ図。実験では、トラックのドライバーの待ち時間が50%も削減されたという。
「物流の長年の課題を解決できた」とVos氏、「Huaweiはイノベーションのパートナーだ」と続けた。
最後にVos氏は、「これらのことができたのはICTあってこそ」と技術の活用が同社の戦略に不可欠になっていることを強調した。「我々は物流のプロで、技術ではスタートアップやHuawei、大学などICT分野のプロと組んでいる。これからハイパーコネクテッドの時代になる。それに向けて、我々はイノベーションのチャンスを活用していく」と述べ、新しい物流に向けて今後もさまざまなプロジェクトを進めていく意向を見せた。