SAPは9月25日、データ活用のためのソリューション「SAP Data Hub」をリリースしている。SAP及び非SAPのデータに対して、ガバナンス、パイプライン、共有ができるツール群で構成され、同社にとって新しいカテゴリの製品だ。背景について話を聞く。
米ニューヨークで開かれた発表会には、同社の最高経営責任者(CEO)を務めるBill McDermott氏も登場。Data Hubの重要性をうかがわせた。なお、McDermott氏は同日、顧客の特定とアクセス管理技術を提供する米Gigyaの買収も発表している。
SAPの最高経営責任者(CEO)を務めるBill McDermott氏
なぜSAPがデータ管理分野に乗り出すのか? データの増加に対してその活用が進まないという実情がある。SAPの調査によると、74%がデータが複雑で敏捷性がないと見ており、86%が収集したデータを最大活用できていないという。SAPでデータ及びデータマネジメント担当プレジデントを務めるGreg McStravick氏は、「毎分300時間の動画が生成されるなど、データは爆発的に増えている。だが、分析などに使われているのはわずか0.5%に過ぎない。企業はデータで大きな問題を抱えている」と述べる。
McDermott氏はデータの重要性を説明するにあたって、自身が取締役を務めるUnder Armourを例にとった。「素晴らしい製品、素晴らしいストーリー、サービスを提供するだけでは不十分だ。競争は激しい。コンシューマーがソーシャルで何をやっているのか? 走っているのか? 自転車なのか?など、自社の顧客を知る必要がある」とMcDermott氏。
SAPでデータ及びデータマネジメント担当プレジデントを務めるGreg McStravick氏
Under Armourがウェアラブルを展開するに至った経緯を説明した。顧客を理解すればアップセル、クロスセルも可能になる。「データ主導で顧客と対話する時代だ。企業において、データは最も貴重な資産だ」(McDermott氏)。
データ戦略は新しモノではなく、2010年に共同CEOとなった時からだ。「SAPの将来や方向性を考えた時、アプリケーション、クラウドだけでなく、データが重要だと考えた」とMcDermott氏、そこで共同創業者のHasso Plattner氏が学術レベルで開発中だった「HANA」の製品化を進めた。HANAはその後ERP「S/4 HANA」の土台になり、現在1万7000社が採用している。
そして2017年、”イノベーションシステム”「SAP Leonardo」を発表、ビッグデータ、ブロックチェーン、機械学習などの新しい技術を容易に利用して、デザインシンキングを通じてイノベーションを支援するというものだ。Data Hubは、イノベーションに必須となるデータ活用の部分をサポートする。「効率の良い調達、オンデマンドでの出荷、問題解決に最適な人を探す……。
これらを行うためにはデータが必要だ。しかも高速に得なければ競争に負ける」とMcDermott氏、経営者は「SAP Digital Boardroom」で自社にとって重要なデータをリアルタイムで一目で把握でき、意思決定ができる。このような包括的なソリューションをそろえるのがSAPの強みとMcDermott氏は胸を張った。
「SAP Data Hub」。データのガバナンス、パイプライン、共有を1箇所で行うことができる。