米国カリフォルニア州サンフランシスコでOracleの年次カンファレンス「Oracle OpenWorld 2017(OOW2017)」が開催されている。会期初日の米国時間10月1日には、会長兼最高技術責任者(CTO)のLarry Ellison氏がデータベース最新版「Oracle Database 18c」を発表して会場を沸かせた。会期2日目の10月2日は、同社がこれまで進めてきたクラウドと人工知能(AI)やブロックチェーンといった新たなテクノロジの将来像が語られた。
コスト削減と戦略的IT投資にクラウド
Oracle最高経営責任者のMark Hurd氏
会期2日目の基調講演は、恒例となった最高経営責任者(CEO)のMark Hurd氏によるエンタープライズIT業界の将来予測で始まった。同氏は、2015年のOOWで2025年までに業界で起きる変化を予想。2016年のOOW基調講演では、予想を軌道修正する内容で講演したが、2017年は自身の予想が間違っていないということを主張した。
というのも、同氏の予想に対してはTwitterなどで否定的な意見が多数寄せられた。ただ、それらの多くは感情的なものばかりで、Hurd氏は2017年現在における状況について市場調査を引用しながら、ほぼ自身の予想通りに進んでいると繰り返した。
例えば、2025年までに企業データセンターの80%が消滅するという予想に対して、IDCの調査では既に17%減少し、データセンター投資も減少に転じていると主張。このペースが続けば2025年には、ほぼ同氏の予想通りになるという。
Hurd氏が予想している2025年の変化
この他にもアプリケーション開発やテストの100%がクラウドに移行するという点も、2017年時点で既に52%が移行しており、予想よりも早くなるとみる。企業データの80%がクラウドに蓄積されるという予想は、Cisco Systemsの調査では88%がその方針にあるとした。
Hurd氏がこう語るのは、企業にとってクラウドへの移行が絶対的な流れになり、後はいつ企業が決断するかという状況に置かれているためだという。同氏は、GDPの成長と企業の成長が似た関係にあるとし、過去5年の世界のGDPは中国を除けば数%成長にとどまり、企業の成長も数%にとどまっていると主張する。
また、企業相手のビジネス(B2B)が中心の企業はIT投資がほぼ横ばいで推移する。一方、コンシューマ相手のビジネス(B2C)が中心に企業では平均20%で増加しているとした。その理由は、B2Cではクラウドやモバイル、ソーシャルを駆使する新興企業が従来型企業のビジネスモデルを破壊して急成長を成し遂げ、生き残った従来型企業もIT投資を活性化させているためだ。
Hurd氏は、2001年当時にFortune500に名を連ねた企業の半分近くがこの17年で消滅し、現在のFortune500の企業も次の17年で半分が消えるかもしれないとした。企業のCEOの平均在籍期間はどんどん短くなり、現在は3年強しかない。CEOは短期で売上を増やし、同時にITを含むコストを削減して利益を確保しないといけない。
クラウドに期待する企業の思惑は、コスト削減あるいは俊敏性、柔軟性、スモールスタートなどさまざまだが、Hurd氏はいずれにしてもオンプレミス主体のシステムをクラウドに移行させることが必然であり、それならクラウドでどうビジネスを成長させるのか、そのためにOracleが何を提供するかを念頭に、同社自身のクラウドへの取り組みを振り返った。
Hurd氏は、現在の同社のクラウド戦略においてSaaS/PaaS/IaaSとデータベースのサービスのフルスタックで顧客企業のクラウド化に対応する体制を確立したとし、今後はB2Bも含めたあらゆる企業のクラウド化に取り組む考えを示す。
どの企業にとってもクラウド化は自明の理であとはいつ動くか、がOracleの見方だった
同氏によれば、2018会計年度第1四半期の段階で、5000社ほどがERPクラウドやデータベースサービスを新たに採用し、1700社の新規顧客を獲得した。基調講演やジェネラルセッションの事例として、物流のFedExやアパレルのGap、新興電力のBloomenergy、タイヤメーカーのPirelliなどが登壇したが、各社とも近年にレガシーアプリケーションからSaaSへの移行あるいはSaaSの新規導入によってデジタルビジネスに乗り出し、成長への歩みを進み出したところだ。
いまだ多くの企業は、オンプレミスで稼働し続けるレガシーアプリケーションをどうクラウドベースに移行させ、新たな成長への舵を切るかが焦点になっている。事例を紹介した各社は、一様にOracleのサポートで自社の変革を進められていると述べた。Oracleの幹部陣も、多くの顧客を着実にクラウドベースに乗せていくことが、同社がいま成すべきことだとしている。そうした現状の中、OOW2017で同社は、バズワードと化しているAIやブロックチェーンといったテクノロジに対する取り組みを次のステップとして示した。