“自律型”でDB管理者はいらなくなる?
Ellison氏が18cで掲げた自律型データベースの構想は、前述のように人の介在をなくすことでデータベースの信頼性や安全性を“次世代”のレベルに引き上げることを目的にしている。
例えば、同社が四半期に一度公開するCritical Patch Updateなどの脆弱性を修正するパッチを適用する場合、現在は数カ月をかけて管理者が事前にテストを重ねてシステムへの影響を徹底的に検証し、それを踏まえて慎重に本番系システムに適用している。その際にはシステムの一部あるいは大部分の稼働を停止させなければならないし、万一のトラブルも生じかねない。
Oracle システムテクノロジー担当シニアバイスプレジデントのJuan Loaiza氏
自律型データベースでは将来的にこうした作業が全て自動化されるという。こうなると、データベース管理者がいらなくなるように思えるが、日本のメディアインタービューに応じたシステムテクノロジー担当シニアバイスプレジデントのJuan Loaiza氏は否定する。
同氏は、「データベース管理者の仕事は大きく2つある。1つはインストールやパッチ適用や調整などの汎用的な作業であり、もう1つはシステムをより戦略的に活用していくための作業だ。誰もが普段している汎用的な作業は自動化されることになる」と話す。
データベース管理者が本来果たすべき役割は自社のビジネスをさらに成長させていくことであり、戦略的な新規システムの検討や導入を先導する、いまある課題をテクノロジからどう解決していくべきかといった、人間にしかできない業務に専念することだという。
「それができる人材はほとんどいないし、企業も簡単には確保できない。だからこそデータベース管理者を日常的な作業から解放し、その役割を担うべきだ。データベース管理者も、今まで以上に自社のビジネスを理解し、貢献していくという変化を遂げる必要がある」(Loaiza氏)
Loaiza氏は、自律型データベースが一朝一夕に実現できるものではないと強調し、40年近くにわたってOracleが蓄積してきたデータベースの最適な稼働を可能にするための知見が強みなると主張する。データベース管理者にとって代わることによる影響への懸念を解消すべく、同社は自律型データベースを導入しても99.995%の可用性が確保されることを保証するとしている。
Ellison氏は、自律型データベースが企業にもたらすメリットに、データベース管理者などの人件費を含めたコストの削減と、可用性や安全性の向上を挙げる。ただし、それらの先にあるのは、企業自身が変革することによるビジネスのさらなる成長だという。
端的には、データベース管理者が新たなセキュリティサービスを利用して、忍び寄る脅威からシステムを守り、ビジネスの継続性に貢献していくという見方もできる。現在、これを担うのはセキュリティの専門家だと考える企業は多いが、セキュリティの専門人材の不足が世界各地で課題とされているだけに、データベース管理者にとっては、セキュリティも担える新たなチャンスと前向きにとらえられなくもない。
企業のビジネスもテクノロジもダイナミックに変わり続ける現状で、従来の業務や役割にとどまっているだけでは、いずれその意義が失われていく。Oracleが打ち出す自律型データベースやセキュリティの新サービスのような仕組みは、データベース管理者に変化の必要性を突きつけると同時に、変化がもたらす価値創造へのチャンスにもなりそうだ。