IDC Japanは10月3日、国内インクジェット市場に関する2017年第2四半期(4〜6月)の実績を発表した。
インクジェット市場全体の出荷台数は、前年同期比8.2%増の83万7000台。市場全体の8割以上を占めているインクジェット複合機(MFP)は前年同期比10.9%増と、ここ3年で一番高い成長率を示した。インクジェットプリンタは同4.7%減となった。
国内インクジェット製品の四半期出荷台数の推移、2012年第1四半期〜2017年第2四半期
IDCによると、インクジェット全体市場は、2014年第2四半期以降、マイナス成長が続いていたが、インクジェットMFPの出荷台数の増加により、2017年には第1四半期(1〜3月)、第2四半期と継続してプラス成長に転じている。
一方で、印刷のニーズが低下している状況に変化はなく、情報の閲覧、保存、共有には、紙の代替手段としてスマートフォンやタブレット、クラウドが利用されている。
このため、IDCでは、2017年第1四半期/第2四半期のプラス成長の理由については、市場減少に歯止めがかかったのか、あるいは底を打ったのか、さらにプラス成長は買い換え需要が集中した一時的なものか、などを判断するために、第3四半期(7〜9月)の状況を注視する必要があるとしている。
主要インクジェットベンダーからは発表される新製品は、2017年もほとんどがインクジェットMFPで、モバイル端末からの印刷の容易さやカラーバリエーション(今年はメタリックグレーやゴールド)、小型化といったことが訴求されている。IDCでは、これらの点をユーザーが画期的な機能/性能の向上ととらえるかどうかには疑問が残るとしている。
一方、アジアでは大容量インクタンク搭載の製品は広く市場に受け入れられている。世界全体でもインクタンク製品は、2017年にはインクジェット市場全体の15%以上を占めるなど、急速に増加している。大容量インクタンク製品は、通常のインクカートリッジ製品と比べ本体価格が高い傾向にあるが、印刷コストが安く、インク交換の頻度が下がることが訴求されている。しかし、国内では同製品は、2017年第2四半期に市場全体のわずか1.9%だった。
インクカートリッジ製品は、新製品でも実売価格が1万円を下回る製品がある。このため、本体価格が高い大容量インクタンク製品の、印刷コストが安いというメリットがどの程度ユーザーの購買意欲を刺激するかが今後の注目ポイントとなる。
IDCでは、モバイル端末から簡単に気軽に印刷できる機能や、大容量インクタンク製品の印刷コスト削減効果の訴求は、すぐにはインクジェット機器の出荷増加にはつながらず、それよりも印刷ニーズ自体を喚起するような売り方の変革が求められているという。