“フィジタル”への移行がカギ--小売業者を取り巻く技術トレンドとビジネスの未来

古川正知 (ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン)

2017-10-10 07:00

 リアルとデジタルの境界が曖昧となり、ネットワークの常時接続とともにモノのインターネット(IoT)が注目を集めています。そんな中、小売業界は非常に重要な転換期を迎えています。この変化の波に乗り遅れた小売業者は、買い物客に軽んじられてしまうかもしれません。

 Zebra Technologiesは、専門店、デパート、アパレルショップ、スーパー、家電量販店、ホームセンター、チェーン展開するドラッグストアなど、世界各地の小売業者を対象としたテクノロジ活用に関する意識・実態調査「リテール・ビジョン調査」を実施しました。

 同調査によると、買い物客の満足度を下げる3つの要因として、商品の在庫が切れていること、他店で同じ商品が安く販売されていること、店内に希望の商品がないことが挙げられています。

 一方で、こうした課題には解決策があります。その一つがセンサと組み合わせたスマートデバイスであり、ビジネスを再び活性化させるべく前向きに導入を検討する小売業者が増えています。

 IoTの導入は、店舗の表側と裏側、つまり店頭とバックエンド(=サプライチェーン)の両サイドにメリットをもたらします。オムニチャネルにかじを切る小売業界において、IoTは生産性、効率性、在庫の可視性、顧客満足度などを向上ものであるといえます。

在庫の改革

 多くの小売業者は現在、店内在庫の可視化に課題を抱えています。多店舗経営、海外進出、オンライン販売といった事業の多様化に伴って事態は深刻化しています。リアルタイムでのサプライチェーンの可視化は、避けて通れない重要な課題となっているのです。

 McKinsey&Companyの調査によると、過剰在庫、在庫切れ、在庫減少を含む“在庫のひずみ”による損失は、全世界で1兆1000億ドルに達しています。在庫切れと過剰在庫の削減だけで、在庫コストを10%節減できると見積もられています。

 マシンビジョンやRFID(無線ICタグ)、データ分析などの技術進化によって、販売員と消費者の双方が在庫状況を確認できるようになり、商品の移動追跡も容易になりました。システムにフィードバックされるデータの正確性も向上しました。

 小売業界全体では、在庫管理の精度が約65%と低い水準にとどまっているのが現状です。これに対して、RFIDプラットフォームは在庫管理精度を95%まで高め、商品単位でのRFIDタグ付けによって在庫切れを80%まで減少させることができます。

 リテール・ビジョン調査によると、こうしたデータを裏付けるかのように、小売業者の70%がサプライチェーンを改善すべく、商品単位でのRFID導入を計画しているか、既に導入済みであることが明らかになっています。RFIDを導入することで、小売業者は在庫関連コストを節約できるわけです。

 例えば、ファッション小売業界では、手作業の在庫確認をRFIDで自動化したことで、作業負担を75%軽減しました。在庫管理の効率化により、販売業務により多くの時間を割り当てられるようになるのです。

 また、サプライチェーンの自動化によって、在庫の可視化を次の段階に引き上げることができます。リテール・ビジョン調査によると、2021年までに小売業者の87%が在庫切れの通知を受信できるようになる見込みです。このうち、商品の位置を示す「プロダクトロケーター」を保有するとの回答は78%、動画による在庫監視を導入するとの回答は76%に達しています。

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