調査

在宅ワークを認める企業の方が離職率は低い--ただしデメリットも

Greg Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2017-10-15 06:30

 在宅勤務が許可されると、従業員の忠誠心は上がる。

 これは、遠隔会議ソリューションを提供しているハードウェアメーカーOwl Labsと、従業員エンゲージメントの調査ツールを提供するTINYPulseが実施した調査の結果だ。

 Owl Labsの広報担当者によれば、今回発表されたレポート「State of Remote Work」の2017年版は、この種の調査として初めて「在宅勤務が、従業員の成功や在籍率、管理職と従業員の関係性に与える影響を分析したもの」だという。このレポートは米国の労働者1097人の回答に基づいている。

 注目すべきは、在宅勤務に対応している企業では、在宅勤務を許していない企業に比べ離職率が低い(前者が9%、後者が12%超)という結果が出たことだろう。この結果は、従業員の忠誠心はオフィスでの物理的な存在感と関係が深いという考え方を否定するものだ。

 調査では、在宅勤務を行っていない従業員に対して、少なくとも月に1回オフィスの外で勤務してみたいかという質問もしている。はたして、65%もの回答者がこの質問にイエスと答えている。

 また在宅勤務を希望していない従業員のうち57%は、仕事の性質上在宅勤務は不可能だと回答していた。

 シリコンバレーの企業の多くがオフィスに集まって働く利点にこだわり始めていることもあり、この10年間の在宅勤務に対する期待には、かなりの変化が見られる。2013年に、米Yahooの最高経営責任者(CEO)Marissa Mayer氏が、従業員がオフィスにいないと仕事のスピードと質が失われるとして、在宅勤務していた全従業員をオフィス勤務に転換したことは有名だ。

 FacebookやAppleも、全従業員のオフィス勤務にこだわり続けていることで悪評を買っている。

 しかしGlobal Work Place Analyticsによれば、「米国の労働者の50%は、少なくとも部分的には在宅勤務が可能な職に就いており、労働者の20~25%は一定の頻度で在宅勤務を行っている」という。

 インターネットやビデオ会議の技術が発達したことが、この傾向を後押しする主な要因になっており、在宅勤務の問題を解決し、在宅勤務への抵抗も緩和する可能性がある、新たな技術も登場している。

 その中でも最も期待されているのが、Double RoboticsCiscoSuitable Technologiesなどが提供しているテレプレゼンスロボットだ。この種のロボットには、人間の代わりとして機能することを目指した、豊富な機能を持つアバターから、オフィスの中を車輪で移動できる移動「iPad」スタンドまでさまざまなタイプがあり、在宅勤務者がロボットをオフィスの中で移動させ、同僚と物理的にやりとりできるようになっている。

 また、遠隔会議用のツールも全般的に強力になっている。例えば調査を委託したOwl Labsは、「Meeting Owl」と呼ばれる次世代のビデオ会議ソリューションを作っている。これは部屋全体を視野に収める360度のインテリジェントなビデオシステムで、ミーティングに参加しているすべての参加者を見ることができる。

 またMeeting Owlでは、効果を最大化するには、いつどのようにビデオ会議を利用すればいいかを分析するアナリティクス機能も利用できる。

 米国では高度なスキルを必要とする技術者への需要が高まっている一方、質の高い開発者が不足しているため、企業は従業員が地理的に分散していても働ける形を模索している。

 しかし、在宅勤務者に不利なニュースもある。調査では、多くの在宅勤務者が、オフィスに勤務している同僚と比べて、上司から同じ水準の支援やキャリア指導を受けられていないと感じていることも明らかになった。

 「例えば、上司がオフィスにいる在宅勤務者は、キャリアに関する話し合いの回数が平均よりも25%少ない」(同レポート)

 この調査結果は、メンターシップから得られるメリットが多いキャリアが浅い労働者には、在宅勤務が悪影響を与える可能性があることを示している。

 上司を説得したい場合や、自分自身で詳しいことが知りたい場合は、このページからレポート全文(英文)を読むことができる。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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