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ちょっと忘れてた東南アジア--多様性と統一の歴史

飯田哲夫 (アマゾンウェブサービスジャパン)

2017-10-11 08:00

 7月から10月まで六本木の国立新美術館と森美術館の共催で「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」が開催されている。恥ずかしながら、なんで今、東南アジアなんだろうと思ってしまった。

 実は今年は東南アジア諸国連合(ASEAN)50周年にあたり、この企画はそれを記念してのもので、ASEAN10カ国から86人の作家の作品で構成されている。最近は海外ニュースが米国、北朝鮮、中国に集中し、保護主義に転じた経済情勢から、ついついASEANのマインドシェアが低下していたようである。

 ASEANは1967年に設立され、ビジネス観点では、常に6億人という人口の多さが注目される。1995年に設立されたASEAN経済共同体(AEC)がASEANを統一市場として出現させることに期待が高まっている。

 しかしながら、今回の展示を見てみると(まだ国立新美術館だけだが)、そこから透けて見えるのは、決して統一されたASEANではなく、多様性と複雑性、そしてそれを乗り越える闘争の歴史だ。植民地化と宗主国からの独立、そして民族間の対立、また多様性から来るアイデンティティの曖昧さなどが作品のテーマとして象徴的である。

 数年前インドネシアでの事業開発をやっていた頃、現地のインドネシア人経営者からも生々しい記憶として民族の多様性が引き起こした事件の話を聞いたものである。アートには、抑圧された感情や社会に潜む問題を浮き彫りにする側面がある。とすれば、今回の展示は統一市場の可能性よりも、より複雑で多様な社会の課題を浮き彫りにするものであるかもしれない。

 かつて、インドネシア企業とのビジネスに取り組み始めたとき、当然インドネシア語を学ばないとそれは成就できないと考えた。

 インドネシア語の良いところは、くねったような表記のタイ語と違い、文字がすべてローマ字で取っ付きやすいことだ。インドネシア語の歴史は浅く、オランダから独立する際に、インドネシアとして統一の言語をもつべきだと考えて、マラッカ海峡の交易に用いられていた言語をインドネシア語として制定したという。その際に表記をローマ字としたのである。

 インドネシア語には、動詞に時制がなく、また、名詞の性や数の変化がないため、文法が非常にシンプルで覚えやすいという特徴がある。インドネシアは、現在でも民族や言語も数百に及ぶというから、それを一つに定めるというのは独立へ向けた強い意志の表れと言えるだろう。

 それでも、筆者のインドネシア語習得は挫折する。なぜならば、インドネシアのIT企業経営者は驚くほどに英語が堪能であったからである。

 数十を超す企業の経営者と会ったように思うが、その点で例外はなかったと記憶している。海外で教育を受けている人も多いというのもあるが、ASEANそしてさらにその先を見据えたビジネス展開を考えている人が多かったのが実感である。ある経営者に至っては、英語教育に熱心で、その子供はインドネシア語より英語の方がうまいとのことであった。

 つまり、多様性と複雑性から来る課題を抱えているという事実がある一方で、ASEANを、そしてグローバルマーケットを対象にビジネスを展開したいという意志もとても強いのである。この両面こそがASEANの面白さであり、ビジネスを展開する上での要ではないかなと思う。

 アート展で忘れていたアジアのダイナミズムが蘇ってきた。たまには行ってみたいですね(釣りのシーズンが終わったら)。

飯田哲夫(Tetsuo Iida)

アマゾンウェブサービス ジャパンにて金融領域の事業開発を担当。大手SIerにて金融ソリューションの企画、ベンチャー投資、海外事業開発を担当した後、現職。金融革新同友会Finovators副代表理事。マンチェスタービジネススクール卒業。知る人ぞ知る現代美術教育の老舗「美学校」で学び、現在もアーティスト活動を続けている。報われることのない釣り師

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