普及啓蒙に取り組む日本RPA協会の設立
大角社長はRPAを事務処理の自動化ではなく、代行と表現する。デジタルの世界で働く新しい労働者が業務を肩代わりするとの考えからだ。人の10倍、100倍のスピードで業務をこなし、24時間365日働くRPAの特長を理解し、活用する企業が増えるとともに、同社への問い合わせが増えてきた。だが、RPAの技術者が足りないし、RPAを評価できる人も少ない。
そこで、仲間作りに力を入れる。大角社長によると、RPAビジネスに興味を示す日本のIT企業は当初、少なかったが、2015年末から風向きが変わってきた。欧米コンサルティング会社が日本企業に欧米の成功事例を適用できないかと検討し始めた。彼らは、BPRを伴うビジネスに発展することを期待し、RAPに取り組み始めた。それを契機に、IT企業やコンサルティング会社との協業が増え、パートナー企業がアビームコンサルティングなど約40社になった。
大角社長はさらなる普及策を考えている。1つは、社内にデジタルレイバー部を設置すること。ある部署が「来月、こんな仕事が増える」とし、デジタルレイバー部に依頼すると、ロボットが現場に送り込まれる。まずは1ロボットを働かせて、作業手順を1つ1つ覚えさせる。入力手順に問題があったら、修正する。飛躍的な向上を体験したら、ロボットを増やしていく。そんなイメージだ。
RPAの導入企業が人手に頼る業務の多い金融業から製造業やサービス業などへと広がる一方で、RPAによる効果の上がらない企業が散見されてきた。失敗の増加は、PRAが信頼を失うことになりかねない。心配した大角社長は、課題解決とRPAの普及啓蒙に取り組む一般社団法人日本RPA協会を2016年7月に設立し、自ら代表理事に就いた。「RPAをITとみると失敗する。人材採用の技術として使うと成功する」とし、同協会はユーザーにRPAの成功事例やその活用方などを紹介する。
人とロボットの作業分担も明確にする。作業が10あれば、1から3まではロボットが担当し、考えたり、判断したりする4から8の作業は、人が担う。そして、8から10は異なるロボットに任せる。そんな効果的な活用法を考える。問題は、追われているルーチンワークから解放し、創造的な時間を創り出せた後になる。新しいビジネス、新しい価値をどう生み出すかだ。
- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。