次世代のテクノロジがプロフェッショナルの仕事の仕方を変化させ、覆していくに従って、事業部門とIT部門の境界線はますますあいまいになっている。このことは、デジタル変革の出現と台頭によって目立ってきている。
手順やワークフローがオンプレミスからクラウドに移行したり、人間の手で行っていた作業が自動化されたプロセスに移るに従って、企業のどの部門が何を担当しているのかが不明確になっていく場合がある。財務面から見ると、この混乱はIT予算にも影響を与える。
デジタル変革は、世界中の企業でIT予算を変えつつある。例えば多くのソフトウェア企業では、収益モデルが企業の設備投資費を得るモデルから、運用費を得るモデルへと変わっており、製品をサービスとして販売するようになっている。また、一部の分野ではデジタル変革が費用削減につながる場合もあるが、予期していなかった新たな費用が発生する場合もある。
デジタル変革がIT予算に与える影響は、企業によって異なる。この記事では、3つのまったく異なるタイプの組織の事例を見ていくことにしたい。
1.ニューヨーク州ホワイトプレインズ:ワークフローの自動化
米ニューヨーク州ホワイトプレインズが、デジタル変革に向けて進めている大きな2つの取り組みは、各部門の既存ワークフローの自動化とデジタル化を始めることだと最高情報責任者(CIO)のMichael Coakley氏は米ZDNetに語った。これには、非常に具体的な目的があった。
市民が市役所と関わる活動を始めようとすると、ニーズを満たすために、複数の市の機関とやりとりする必要が生じることが多い。しかしCoakley氏によれば、これらのやりとりは各部門で分断されており、それぞれのプロセスに必要なデータが適切に共有されない場合があるという。
「クラウドベースのワークフローソリューションを導入することによって、都市の各部門間のやりとりが効率化された。これによって紙の消費量が大幅に減ったほか、市と共同で事業を行うことを検討したり、その必要がある関係団体の体験が改善した」とCoakley氏は述べている。
紙の消費量が減り作業量が減れば、費用も削減できるが、新たなレベルの自動化を行うことによって、IT部門の運用予算は増加する。Coakley氏は、組織内に多くの開発者を抱えている大きな自治体では、設備投資費も増える可能性があると述べている。
ホワイトプレインズは一部のサーバを仮想化することに成功しており、今後はデスクトップも仮想化する予定になっているため、これによって運用費が減らせる可能性もある。しかしそれも、VMwareなどのツールにかかる運用費が増えることで相殺されてしまうかもしれないとCoakley氏は言う。

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