第1回の黎明期(金融オンライン化の時代:1970~1990年代)では、電算化、オンライン化の初期における企業間取引を中心に解説した。その構成の定義として4種類(1対1型、リレー型、スター型、メッシュ型)を説明したが、第2回では、さらに企業間取引をトランザクションという処理にまで落とした際の一つ一つの違いを見てみよう。
図6 企業間取引のトランザクション例(認証、インストラクション、決済)、出典:サイバー研究所(2017年10月)
図6では、企業間取引のトランザクションを3つに分類した。通常、金融(例、SWIFTネットワーク、Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication SCRL、銀行間の国際金融取引に係る事務)であれば、(1)(2)(3)をトランザクションとして処理する。そのため、SWIFT開始当時は、MT(メッセージ・タイプと呼ぶ)を細かく定義し、(2)インストラクションだけを1件の電文(当時まだ電子メールがなかった)とし、(3)決済だけを1件の電文にし、MTを使い分けていた(現在であれば、電子メールでまずはできる)。
しかし、当時SWIFTなどの企業間取引に参加できない法人は、FAX、TELEX、MARK3(米General Electric、国内では当時の電通国際情報サービス)などのフリーフォーマットを前提とする1件の電文で、(2)インストラクションや(3)決済をしていた。
図7 企業間取引のトランザクション例(フリーフォーマット)、出典:サイバー研究所(2017年10月)
図7の企業間取引のトランザクション例(フリーフォーマット)では、企業間取引でもSWIFTなどに加盟できない企業が直接先方に、FAX、TELEX、MARK3などで接続し、指示や決済をする。このトランザクション(1件の電文)では、課金単位が一般的に文字数や電文量であった。このフリーフォーマットの企業間取引の利便性は、事前に入念な手続きが必要なく、短期でトランザクションが作れることである。
一方、弱点としてミス(理解不能、文字のミスなど、トランザクションのフェール、失敗)もそれなりにあった点である。担当者により、省略してある箇所を「いつもの通り、よろしく」と書いてない場合、「いつも」の理解が異なる場合も当然あった。
このように企業間取引のトランザクションを1件単位まで分解すると、図6の「認証、インストラクション、決済」が良さそうである。しかし図7の「フリーフォーマット」が2017年の今日まで残っているのはなぜだろうか。
例えば、SNSのチャットで「ビットコインを使って、US100ドル送金したよ」と伝えるとする。このフリーフォーマットが残る要因としては、手数料の低さが挙げられる。図6の場合、SWIFTネットワークに加盟するFee(手数料)が恒常的に必要となるものの、図7のフリーフォーマットでは、課金が文字量など「使った分だけ支払う」ので、いたってシンプルである。このあたりは、当時「クラウド」という言葉は無かったものの、「クラウドの使った分だけ支払う」ポリシーの先駆けであろう。