デジタルはテクノロジではない
前回の講座で、デジタルをコンピュータ、インターネットというテクノロジの視点から考えてみました。デジタルをテクノロジだけで考えると、過去になんども技術の革命は起きていて、デジタルを連想させるようなテクノロジをデジタルと解釈してしまうと混乱してしまうのです。
生まれながらのパソコンとネット世代、1980年以降に生まれたミレニアル世代と呼ばれる人たちがデジタルを考えるにあたり、重要であるのは間違いありません。海外出張で国際線を利用するビジネスマンの半数以上がミレニアル世代という事実から見ても、無視はできません。時代は人が創るものですからね。
ミレニアル世代の価値観
初めてのデジタルネイティブ世代(コンピュータ、ネットが物心ついた時から身近にある世代)であり、1)モノよりサービスにお金を払う価値観をもち(ものに価値を感じない)、2)ネット上の共感を異常に気にする、また3)インターネット上のデータで物事を判断しようとする等の特徴があります。米国に注目してみると、これまでのどの世代と比べても白人人口が少なく、若年期に失業率が高かったり、平均初婚年齢が高く、親との同居率がアメリカの歴史上でもっとも高いという興味深いデータもあります。
この背景には、急速に普及したデジタルテクノロジや、インターネット上で欲しい情報を瞬時に得られる環境で育ち、ソーシャルネットの誕生によりインターネット上の仮想空間での友人との共感を重視するようなりました。それが浸透しすぎたためリアルな友人と仮想の友人に境目がなくなり、過度にソーシャル上の共感を重視するような問題も起きてきています。
ミレニアル世代は企業のライバル
ミレニアル世代をマーケティングの対象と考えるケースは、皆様の周りでも当たり前になってきているかと思いますが、重要なのはミレニアル世代の新しいタイプの経営者が破壊的な新しい事業を成功させてきている事なのです。
デジタル化とは無縁だった業界でも、ミレニアル世代の経営者の登場により業界を震撼させるような破壊的な影響力のあるサービスは枚挙にいとまがないのが現実です。Uber、Airbnb、Facebook――こうした企業が登場した業界では、規制や商慣習の存在を理由として、既得権益に守られ、サービスに飛躍的な発想は必要なかった。
ところが、ミレニアル世代の経営者は、過去の事例に惑わされず直感的な発想で市場に打って出てきたのです。その成長は予想を大幅に超え、破壊的な変化とは遠そうに見える金融業界でもミレニアル世代の経営者が、従来の金融機関が提供してきたサービスを低価格で提供するFinTech企業として、自由な発想で他の業界も巻き込んだ大きな変革となる様相を見せているのです。
彼らが自分らしさのあるライフスタイルに重きを置き、既存の就職形態にこだわらない自由な世代です。彼らは直感的発想を重視し、「面白い」「便利」と思ったら、先入観なくクラウドに代表される投資のかからない最新技術を活用して実現してしまう。直感と最新テクノロジをうまく活用し実行力があるので事業推進のスピードは恐ろしく速い。
つまり、ミレニアル世代は経営者として頭角をすでに現しており、マーケティングの一対象セグメントではなく、強力なライバル企業の登場として捉えなければならないのです。