日本IBMは10月26日、同社のIaaS事業動向を報道機関向けに説明した。説明の多くはVMwareとの協業に関するもので、8月にVMwareとAmazon Web Services(AWS)がベアメタルクラウドサービスの開始を発表したことへの対応だった。
VMwareとAWSは8月下旬に開催した年次イベント「VMworld 2017」で、ベアメタルクラウドサービス「VMware Cloud on AWS」の提供を発表。両社は2016年10月に協業し、VMware Cloud on AWSはその成果のファーストステップに当たる。
日本IBM理事 クラウドサービス事業部長の田口光一氏
一方、IBMはVMwareと2016年2月に協業し、ベアメタルクラウドを含む広範なIaaSでのサービスを「VMware on IBM Cloud」として展開する。説明に立った理事 クラウドサービス事業部長の田口光一氏は、「VMworld 2017ではIBMも新たな取り組みを発表しているが、VMware Cloud on AWSが大きな話題を集めてIBMの発表がかすんでしまい、AWSとIBMの違いを説明したい」と話した。
田口氏は、VMwareベースで稼働するオンプレミスの基幹系システムと顧客関係管理(CRM)などクラウド主体のアプリケーションをハイブリッド構成として構築・運用していくには、ベアメタルサービスを含むVMware on IBM Cloudの方が有利だと主張する。顧客ベースでもVMware on IBM Cloudは既に約1400社が採用し、国内では製造業を中心に仮想サーバが1000台を超えるような大規模環境での導入が増えているという。
IBMが挙げる「VMware on IBM Cloud」の主な特徴
同氏はVMware on IBM Cloudのメリットを複数挙げ、特に運用管理の点では、ユーザーが同社のグローバルテクノロジーサービス(GTS)によるフルマネージドサービスや、ユーザー自身による運用のどちらでも選択できるとした。また、世界40カ所以上のIBMデータセンター間でユーザーは無償で専用線サービスを使えること、ユーザーが所有するVMwareのライセンスをIBM Cloudに持ち込んだり、月額課金などの体系で柔軟に利用できたりする点などが強みだと述べた。
さらに、「VMware Cloud on AWSはまだスタートしたばかり」と前置きした上で、VMware on IBM Cloudと直接比較し、上述などの点が有利になると説明した。なお、VMware Cloud on AWSはまだ初期段階で、IBMが比較対象に挙げた点などは今後変更されていくとみられる。
この他に田口氏は、9月にVMwareと発表した既存のvSphere環境をオンプレミスやクラウド間で容易にライブマイグレーションできる「VMware HCX technologies」について、10月26日時点で国内提供可能なのは日本IBMのみであることや、IBM Cloudのロゴデザインを変更したこと、2017年末までVMware on IBM Cloudのキャンペーンを実施することを説明した。
IBM Cloudのベアメタルサービスと“一般的な”ホスティングの違い
IBM Cloud自体はIaaSだけではなく、「Watson」に代表される人工知能やアナリティクスといったアプリケーション、PaaSなど広範なサービスで構成される。IaaS関連は2012年に買収したSoftLayerがベースとなっているが、IaaSのコモディティ化でサービス内容を大きく差別化することが難しいのが現状。このためIaaS事業者の間では、大多数の企業が利用しているVMware環境をいかに取り込めるかが焦点になっている。
田口氏は、「10月31日から始まる国内の『vFORUM 2017』を控え、今回の説明では8月のVMworld 2017での発表内容も振り返りながら、IBMとVMwareの取り組みを整理して発信したかった」とコメント。通常の記者会見で表立って発表者がこうしたコメントをするケースはあまり見られず、“異例”の取り組みでIBM CloudのIaaSをアピールする説明会となった。