データが「新しい石油」だとすれば、今後は激しい縄張り争いと、所有権に関する争いが起こるはずだ。そしてその争いは、実際に始まっている。
クラウドがより当たり前になり、モノのインターネット(IoT)によってセンサのデータが大量に得られるようになると、誰がその情報にアクセスする権利を持ち、誰に所有権があるかでもめるようになる。多くの企業は、顧客データは自社のものだと考えているだろうが、事態はそう単純ではない。
データを所有していると言えるのは、テクノロジパートナーがデータに対するアクセス、統合、イノベーションを簡単にできるようにしてくれているからだ。いわゆるAPI経済の夢と希望が現実のものになるかは、データへのアクセスを提供する企業と、データ共有に関して構築されるエコシステムにかかっている。現実には、今後ITベンダーや運用テクノロジベンダーが、顧客企業のデータをコントロールするようになる可能性がある。
この数週間だけでも、次のような話を聞いた。
- あるSaaSプロバイダーは、顧客が自社のデータにAPI経由でアクセスする権利に年間利用量を課すことを決めた。
- 契約に関する争いが原因で、APIへのアクセスが停止された。
- 顧客がデータをパートナーやモノとつなぐ統合に追加コストを徴収された事例があった。
こういった出来事は一般的になりつつあるが、データはあらゆるデジタル変革の取り組みの中心であり、賭けられているものは大きい。今後は、調達プロセスの早い段階で所有権について交渉しなければ、自分のデータにアクセスするために料金を支払うことになる。その一方で、自社が持っているデータをベンチマークされた情報として(もちろん匿名化の処理を行った上で)提供することを求められるようになるだろう。
それに加え最近では、プライベートのような場で、運用下にあるデータについて話をするベンダーも増えてきている。その内容は言葉が少し違うだけで、大手金融機関が運用資産について話している内容とそっくりかもしれない。
データがもっとも貴重な資産であることを考えれば、それも不思議ではない。
金融機関の例え話をさらに推し進めれば、今日のデータの所有権に関する状況は、銀行が顧客のお金を預っておきながら、引き出しが必要になったらそこに条件をつけるようなものだ。
企業は自社のデータを所有していると思っている。ある意味ではその通りなのだが、グレーな部分がかなり多く存在する。IoTが普及するにつれて、データの所有権の問題は大きくなっていくだろう。