企業文化の変革が最も難しい
最も難しいと説明したのが、企業文化の変革だ。実現のため、3つの施策を実践した。1つは、GEの全社員が共有するという指針「GE Value」から「GE Beliefs」にシフトしたこと。
「GEValue」から「GE Beliefs」
従来のGE Valueは「やや軍隊的な内容だった」と熊谷氏は打ち明ける。「強く言われるとだめだが任されると力を発揮する」といった現代の若年層の特性を考慮し、GE Beliefsに変更した。GE Beliefsの「お客さまに選ばれる存在であり続ける」という言葉の裏には、従来は製品志向がどうしても強く、顧客志向が弱かったという実情があるという。「どんな環境でも勝ちにこだわる」という5つ目の文言からも読み取れるように、全体として、顧客や従業員を含めた市場の変化に、柔軟に対応する企業になるため、時代にあった動機付けをしていくことが主題となっている。
企業文化の改革におけるもう1つの取り組みは、永遠のベータ版のイメージのあるスタートアップ的な発想を「FastWorks」として取り入れたことだ。「飛行機のエンジンをベータ版で出すわけにはいかない」といった内容の反発が実際に社内から上がったと熊谷氏。
「"完璧にしてから世の中に出す”という文化があるGEとは相容れない発想だった」ものの、そこは「品質を落とすという意味ではない」として丁寧に説明したと振り返る。実際に、サプライチェーンの取り組みにおいて、航空機エンジンのブラケットデザインを、3Dプリンタのコミュニティで実施するコンテストで決めることにした。56カ国から700以上の応募があり、最終優秀作品のデザインを実際に採用した。GEとは全く無関係のインドネシアの若手エンジニアだったという。
Fast Worksは日本法人にとってチャンスと考えているとも話す熊谷氏。GEをグローバルで見たとき、高度成長期は日本法人の存在感が強かったが、アジア市場の成長などにより、最近は日本の影が薄くなってきているという。
Fast Worksのような新しいアイデアでも、実装されれば、そこからの展開は早いという日本法人の特性が生き、日本にFast Worksはすばやく浸透したという。結果として、さまざまなアイデアがグローバルで採用されるケースが増えるなど、日本法人の存在感が再び高まってきた。
シリコンバレーのスタートアップ企業に学んだ
8月1日付で新CEOに就任したJohn Flannery氏の言葉は「Our Future is Digital」。「CEOとしてさまざまな意思決定が必要だが、1つだけ言えることはGEはデジタルとともにあることだ」(Flannery氏)
世界的にも典型的な重厚長大企業と言えるGEだが、デジタルを旗印に、着々と変身を遂げている。GEの今後の動きとともに、ライバルとなる日本の製造業がどう出るのかにも注目が集まってくる。