「最高情報責任者(CIO)がSLAを達成するのは当たり前。新しい役割を全うしないなら、キャリアはそこで終わる」――米Verizon Enterprise SolutionsのCIOを務めるVic Bhagat氏は、社内ITに責務を負うCIOの役割が大きく変化し、社内外にデジタル変革を発信する役割も担うようになったと語る。
Verizon Enterprise SolutionsのCIOを務めるVic Bhagat氏
同氏は、EMC(現Dell EMC)やGEのさまざまな事業部門および現地法人のCIOとして、30年以上のキャリアを築いてきたという。現在は大手通信事業者の中にあって法人向けITサービスを手掛ける部門のCIOだが、仕事の7割以上を顧客や外部パートナーとの会合に割き、冒頭のメッセージを自ら体現してきた。
CIOが会社を“売り込む”
Verizonの社名を聞いて多くの人が描くイメージは、米国の電話会社あるいは通信会社というものだろう。これらは古くからの“本業”だが、現在では同社に限らず多くの通信会社がデータセンターやクラウド、セキュリティなどのサービスを展開し、収益源の多様化を進める。
Bhagat氏の取材に先立って日本法人社長の藤井一弘氏は、「『米国の電話会社が日本で何をしているのか?』とよく聞かれる。日本企業の売上の半分は海外市場からで、Verizonは世界に進出する日本企業もサポートしているが、まだ無名だ。日本での知名度を高めていきたい」と主旨を説明した。Bhagat氏が取材に応じるのは、CIOが自社の対外的なアピールもこなすという、新たな役割を担っているからだそうだ。
まずBhagat氏は、同社の注力分野として(1)インテリジェントネットワーク、(2)アドバンストセキュリティ、(3)アドバンストコミュニケーション――の3つを挙げた。
インテリジェントネットワークとは、ソフトウェア定義型ネットワーク(SDN)やネットワーク機能仮想化(NFV)などの技術を用いて、セキュアかつ柔軟性と弾力性に富んだ高度な通信サービスを提供するための基盤になるという。「例えば、多くの顧客企業がクラウド化を指向しているが、データをセキュアにクラウドに運んでほしいと希望している。IoTへの対応もしかりだ。ここでネットワークが、レールのような中心的な役割を果たさねばならない」
Verizonのネットワークでは、多くのインターネットトラフィックをさばいているという。ネットワークの中でどのようなアプリケーションの通信が発生しているのか、サイバー攻撃などのセキュリティの脅威に関与するものがあるのか、といった状況を把握し、安全性の向上、ユーザーにストレスを感じさせない通信品質、多様なユーザーニーズに対応したサービス提供が可能だと強調する。
アドバンストセキュリティは、インテリジェントネットワークに紐づくものだが、単に安全な通信環境を提供するだけでなく、企業顧客がアナリティクスやインテリジェンスを用いて高度なセキュリティ対策を講じたいとするニーズに対応する。セキュリティの脅威が企業ビジネスの継続性に大きな影響を与える昨今、「セキュリティ対策を顧客が主導する形でも、Verizonが主導する形でも、どちらの要望にも対応できる」
アドバンストコミュニケーションとは、音声や映像、チャットなどあらゆるコミュニケーション手段を使って従業員同士のコラボレーションを促し、ビジネスの進展をサポートする。ひと昔前には「ユニファイドコミュニケーション」とも呼ばれたが、Bhagat氏は、顧客にツールも世界につながる通信回線も提供できる点が同社の強みとアピールする。