CIOが“営業”する意味
Bhagat氏のようなCIOが対外アピールもこなす姿は、10年前ではあまり考えられなかったことだろう。
初期のCIOの役割は、業務に必要な情報システム環境を整備し、社内に向けたサービスを提供するというIT部門の責任者だったが、ビジネスにおけるITの重要性が高まるにつれ、経営陣の一角として経営戦略とITの整合性を調整したり、IT戦略を主導したりする重要性が増した。さらに役割を変化させているのが、“デジタルトランスフォーメーション”ブームの到来だ。
「この取材の前に日本企業の幹部と話したが、彼はIoTの会社になりたいと話していた」
デジタルトランスフォーメーションの姿は100社あれば100社違うが、ビジネスを広げるためにITを活用しなければならない事情は、業種・業界を問わず共通しているという。Bhagat氏によれば、ITの活用が社外向けだろうと、社内向けだろうと、それを主導して結果につなげることが現在のCIOに求められる役割だ。
「昔のCIOの評価基準は、インフラ構築やアプリケーション導入に使ったコストとか、SLAや稼働率目標を達成したかといったものだった。現在の評価基準は、これらに加えて業績貢献やセキュリティの担保、あるいはユーザー体験の伝道といったものがある。つまり、CIOがSLAを達成するのは当然で、会社の成長につなげることができないといけない。できなければ、そこで自分のキャリアは終わるし、お払い箱にされる」

現代のCIOには「業績」「モダンIT」「セキュリティ/ガバナンス」「顧客体験」といったことが“DNA”として求められ、全うできないCIOは“Career Is Over”になるだけという
Bhagat氏は30年以上におよぶ自身のキャリアで、最高経営責任者(CEO)をはじめとする取締役が、日常の会議でセキュリティやIoT、クラウド、ビッグデータといった言葉を使うようになったことが大きな変化だと話す。取締役たちが語るこうした言葉を現実の形にできるのがCIOであり、その責任がCIOにあると力説する。
「利益に貢献するCIOを営業マンと思う人もいるだろうが、そうではない。デジタルの新しい体験や価値の実現をリードするCIOがアピールすれば、顧客の購入意欲が高まるかもしれないし、ソリューションの提供スピードを速めて顧客満足度が高まるかもしれない。これはITベンダーだろうと、消費者相手のビジネスだろうと、あらゆるCIOに共通するの役割だ」
Bhagat氏が業務の7割以上を対外向けに割く根本的な理由は、デジタル変革の取り組みを広めるためにあるという。その中身は協業だったり、マーケティングだったりと実にさまざまだが、従来の役割や業務の範囲にとどまらないスタイルが変革の1つの姿であるようだ。