Gartnerの調査ディレクターSid Nag氏は、発表文の中で「2016年の最終的な数字によれば、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)分野の2016年の売上高は予想よりはるかに大きく、482億ドルに達した」と述べている。同氏は「SaaSは2017年にも予想より速く成長する見込みで、このことがパブリックラウド市場全体の売上高を大きく押し上げるとみられる」としている。Gartnerは、2017年のSaaS分野の売上高は前年比21.6%増の586億ドルに達し、2018年にも同じ成長率を維持して712億ドルになると予想している。
Nag氏は続けて、「エンタープライズ規模の組織が、将来のアプリケーション開発プラットフォームの主要な形態はサービスとしてのプラットフォーム(PaaS)になるという考えを強めているのを受けて、PaaSの戦略的導入も、前年の予想を超えて進んでいる」と述べている。また2017年のPaaSの売上高は前年比26.7%増の114億ドル、2018年は前年比24.6%増の142億ドルに達すると予想されている。
もっとも売上高の伸びが大きいのはIaaS分野で、予想では2017年には前年比35%増の347億ドル、2018年には前年比32%増の458億ドルに達するという。
Gartnerは従来のクラウドコンピューティングの柱となるサービス分野(SaaS、PaaS、IaaS)以外にも、クラウドビジネスプロセスサービス(BPaaS)、クラウド管理およびセキュリティサービス、クラウド広告の3つのパブリッククラウドサービス分野について調査を行っている。同社の2020年までの売上高成長予測は次のようになっている。
各パブリッククラウドサービスの売上高予測
データ:Gartner/図表作成:ZDNet
各パブリッククラウドサービスの売上高増加率の予測
データ:Gartner/図表作成:ZDNet
Gartnerは、パブリッククラウド導入に向かう過酷にも見える強行軍が行われているのを反映して、すべての分野(特にIaaS、PaaS、SaaS)で成長が続くと予想している。あらゆるものがサービスとして提供されつつあると言っても、すべてがサービスに置き換わるのはずっと先の話だ。「2016年時点では、インフラ、ミドルウェア、アプリケーション、ビジネスプロセス市場全体の売上高の約17%がクラウドにシフトした。2021年までには、この数字は28%まで伸びるだろう」とNag氏は述べている。
クラウド導入には前述のような潜在的デメリットがあるが、それ以上に、クラウドへの移行に全力を尽くすと決めた組織にとってさえ、移行に必要な作業量が膨大であることも問題だ。複数のアプリやビジネスプロセスをクラウドに合わせて修正し、クラウドプロバイダーやサービスをを比較して選定し、サービスを設計して安全を確保し、コストを予想してガバナンスポリシーを策定し、サービスのプロビジョニングとオーケストレーションを行い、デプロイメントの管理と監視を行う必要がある。
Spiceworks
クラウド導入の現状については、Spiceworksも最近「2018 State of IT」と銘打ったIT予算とテクノロジーのトレンドに関するレポートを公表している。この調査は7月に実施されたもので、北米と欧州の中小企業から大企業までを含むさまざまな組織で働く、1003人のITプロフェッショナルから得られた回答に基づいている。調査対象の業界には、製造業、ヘルスケア業界、非営利組織、教育、公共団体、金融業が含まれる。
IT予算の配分を見てみると、ホスティング・クラウドサービスはハードウェア(31%)、ソフトウェア(26%)に次ぐ21%を占めている。また、過去1年間で予算配分が増加した答えた人の数は、このカテゴリが最も多かった。
データ:Spiceworks/図表作成:ZDNet