「われわれの最大のストアはAdidas.comだ」というのは、Adidasの最高経営責任者(CEO)、Kasper Rorsted氏だ。デジタルメディアが主要なインターフェースという同社は、テレビ広告をやめ、デジタル戦略を強化している。
Rorsted氏はSalesforce.comの「Dreamforce 2017」の基調講演に登場し最新のモバイルアプリを発表、デジタルとパーソナライズの重要性について語った。
Salesforce.comのCEO、Marc Benioff氏はAdidasのジャージとスニーカーに着替えて、Rorsted氏を迎えた。
Adidasは一日に120万足の靴を売っている。これは1年前の100万足から2割アップとなり、現在同社は2020年に自社ECより40億ドルを売り上げることを目標にしている。「デジタルにあるたくさんのノイズ、データをうまく活用して顧客に関連性のあるものを提供する」とAdidasのRorsted氏はいう。キーワードは選択肢、パーソナライズだ。それを実現するに当たって、以前から利用していたSalesforceの技術をフル活用することにした。
これまで店舗で同社が直接やり取りできる消費者は直営店に限られていた。デジタルでは直接やり取りし、データを得ることができる。それだけでなく、Salesforceのクラウド技術は別の効果ももたらした。「これまで6~9カ月かかって機能を構築してローンチしていた」というが、大幅に短縮できたのだ。
Adidasの最新のモバイルアプリを支えるのは、「Marketing Cloud」「Commerce Cloud」「Service Cloud」といったSalesforceの技術だ。基調講演では、Salesforce.comのプロダクトマーケティング担当エグゼクティブバイスプレジデントのStephanie Buscemi氏が、消費者がモバイルで購入、決済、発注後の変更、と一連の動きをデモしながら、製品を説明した。
まずはMarketing Cloudだ。ジャーニービルダーを利用してメール、モバイル、ソーシャルなどのチャネルに向けて、1-1のパーソナライズジャーニーを構築できる。さらにはEinstein Visionを使って、ソーシャルフィードにある自社製品を検出できるので、「意味のあるキャンペーンを展開できる」とBuscemi氏。
パーソナライズとプロファイルでは、買収したKruxのデータマネジメントプラットフォームを活用する。オンラインのコンシューマーデータのキャプチャ、マルチデバイスでの同一ユーザーの特定、セグメント化、データのアクティベートなどの機能を持つもので、Salesforce.comは今年、Kruxを「Salesforce DMP」と名称変更している。
キャプチャしたデータをCRMデータと組み合わせ、さまざまなデバイスでパーソナライズされた広告を展開できる。さらには拡張性もある、とBuscemi氏は説明する。「コンシューマーは自分に関連性のない広告はいらない。コネクションを持てる広告を配信しなければブロックされてしまう」と述べる。