クラウドコンピューティングはすぐに消え去ってしまうような流行ではない。そして多くの組織にとって、アプリケーションやインフラだけでなく、その他のIT関連機能や業務機能を移行することは完全に理にかなった選択だと言える。しかし、クラウドコンピューティングが成熟しつつあるにもかかわらず、組織は自社インフラからクラウドに移行するうえで、データのアーカイブや統制の喪失、アップタイムなどに関するさまざまな懸念を抱いている。
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ITリーダーはたいていの場合、IT機能をオンプレミスに残すという判断を下す際に、セキュリティに関する懸念を述べる。しかし、企業がクラウドプロバイダーを選定する際に、デューディリジェンスを実行し、セキュリティリスクと規制基準を念頭に置いておくというのであれば、この懸念は問題とならないはずだ。また、クラウドの方がオンプレミスよりもずっとセキュリティが高いという意見を述べる専門家すらいる。クラウドへの移行を阻む懸念としてセキュリティが決定的なものにならないというのであれば、他にどのような懸念があるのだろうか?
データのアーカイブにまつわる懸念
PlanetMagpie IT Consultingの創業者兼プレジデントであるRobert Douglas氏は、企業が自社の運用をクラウドに移行する際の懸念の1つとして、データのアーカイブに関する統制の喪失を挙げている。同氏は「積極的にアーカイブを取得せずに日々の業務を続けていると、あまりにも簡単にデータを失ってしまう」と述べている。
例えば、ある会社が「Office 365」を導入したと考えてほしい。その後、ある従業員が退社し、該当従業員のユーザーアカウントを削除した場合、アカウントとともに電子メールのアーカイブも削除されることになる。またプロバイダーの提供する電子メールサービスによっては、削除されたメールの保持期間が30日間のみというところもある。Douglas氏は、積極的にアーカイブを取得しなければ、こういった情報は永遠に失われると述べている。企業を守るには、オンプレミスやプライベートクラウドでアーカイブサーバを別途、長期にわたって運用していく必要があるのだ。加えて、クラウドサービスがデータをバックアップするという場合であっても、そのデータがどこに保存されるのかについて懸念がつきまとう。