山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国でネットサービスが大きく変わる11月11日

山谷剛史

2017-11-14 07:30

 中国で11月11日は「双十一」と呼ばれるECサイトのお祭りの日だ。1の字を並べているので独身の日とも呼ばれている。双十一商戦を仕掛けた阿里巴巴(アリババ)のECサイト「天猫(Tmall)」を含め、各ECサイトが前年よりもさらに売上額を伸ばした。

 天猫の1日の売上額は前年比39.4%増の1682億元(約2兆8600億円)、小包配送注文量は6億5700万個という記録を打ち立てた。またスマートフォンなどからの注文が全体の9割と、スマートフォンでの注文の割合がさらに高まった。

 中国第2のEC企業「京東(JD)」も、11月1日~11日までの売上が去年を超える1271億元(2兆2000億円)を記録。複数の宅配便業者をビッグデータで管理し自動で振り分ける阿里巴巴に対し、自社倉庫路線を進める京東は配送の早さで対抗した。また、越境EC最大手の「網易(NetEase)」の「考拉(Kaola)」というサイトも昨年比で売り上げが4倍となった。家電ショップ系ECサイト「蘇寧易購(Suning)」も新記録となった。中国のEC祭り「双十一」での運輸ニーズを予想し、中国鉄道部は荷物運搬専用の高速鉄道列車「復興号」を大増便した。

 一方で、11月11日は中国のネットサービスを普及させるトリガー的な日でもある。そもそも11月11日は、当時阿里巴巴が既存の「淘宝網(タオバオ)」よりも信頼できるサイト「天猫」を普及させるために行われたイベントでもある。

 また別の年には、今では中国で当たり前となったリアルショップでのアントフィナンシャルの「支付宝(アリペイ)」での電子決済を普及させるキャンペーンをこの日に行った。双十一は阿里巴巴が最初に仕掛けたイベントだったが、京東も「騰訊(テンセント)」の「微信支付(ウィーチャットペイ)」普及も双十一にキャンペーンを行いさらなる普及を促した。阿里巴巴が仕掛けた双十一のイベントに対して、ライバル企業が指をくわえて見るわけではなく、本家を潰さんばかりに祭りに便乗し、結果的に現代中国を象徴するお祭り日の一つとなったのである。

 こうした背景から、今年も規模を問わずECサイトや金融サービス、さらにはスマートフォン向けゲームまでも11月11日を特別な日として特売を行った。双十一の本家アリババが仕掛けたことの1つに、例えば同社のスマートスピーカー「天猫精霊」を99元(約1700円)という激安価格での提供が挙げられる。さらにアントフィナンシャルの信用サービス「芝麻信用」を活用した新サービスを双十一前にリリースした。

 芝麻信用については当連載でも「中国の社会信用スコア「芝麻信用」で高得点を狙うネットユーザー」という記事で紹介している。

 芝麻信用の信用スコアを活用した新サービスの1つは、阿里巴巴の中古サイト「閑魚」の新サービス「信用速売」だ。信用速売とは、芝麻信用で信用スコアが600点以上の場合、中古スマートフォンの買取を申し込むと、配送前に買取料金を前払いしてくれるというもの。買取登録を行いお金が支付宝で振り込まれてから、後から配送業者に依頼して商品を送ることができるようになる。

 これにより、初めに買取登録をして、買取料金を電子決済で受け取り、双十一のタイミングでスマートフォンの新機種を買い、データ移行した後で、買い取る商品を配送することができるようになる。

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