行動科学でCO2削減--日本オラクルらが国内初の大規模「ナッジ」を実証

渡邉利和

2017-11-14 09:56

環境省''
環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 地球温暖化対策事業室長の水谷好洋氏

 日本オラクルと住環境計画研究所は11月13日、環境省の「平成29年度低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業」の委託を受け、全国のエネルギー事業者5社の協力を得て実証事業を開始することを発表した。

 「ナッジ(nudge)」とは、「そっと後押しする」ことを意味する英単語。行動経済学などの理論を活用し、社会と環境、自身にとってより良い高度を促すことを指す。この実証事業では、オラクルが世界10カ国100社での実績による「ナッジモデル」をベースに“日本版ナッジモデル”を構築することを目指す。ナッジの知見を踏まえた情報発信によって、エネルギー使用に関わる行動変容やライフスタイルの変化を促すことで持続的なCO2削減を実現していくことを狙う。

 まず環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 地球温暖化対策事業室 室長の水谷好洋氏が「行動科学の政策への活用と行動変容の促進を通じたイノベーションの創出・実装について」と題して、環境庁の取り組みを説明した。

そらたん''
日本オラクル取締役 執行役 最高経営責任者のFrank Obermeier氏。掲げているのは「そらたん」のぬいぐるみ。日本固有の特性として「キャラクター文化」「高いモバイル保有率」「エネルギー事業者の地域密着性」が想定されており、これらを活かした日本独自のナッジ構築を目指していることから、まずはキャラクター文化に対応する取り組みとして「そらたん」が準備されている。要は、「そらたん」からのメッセージとして省エネアドバイスを送れば効果が高いのでは、という想定を検証してみる、ということになる

 政府は、「2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減する」という目標を掲げており、この達成に向けた取り組みの一環として「『環境価値』に目指した行動変容を個人に促し、『環境価値』が実装された低炭素社会へのパラダイムシフトの実現を目指す」としている。また、ナッジの活用に関しては、欧米での成果を踏まえて「費用対効果が高く、対象者にとって自由度のある新たな政策手法として注目されて」いると評価する一方、「我が国への適用や効果の持続可能性については検証が必要」としており、今回の実証事業につながっている。

 今回の実証事業にはエネルギー事業者として北海道ガス、東北電力、北陸電力、関西電力、沖縄電力の5社が参加する。2017年度は、全国のべ30万世帯(各6万世帯×5社)を対象に、パーソナライズされたエネルギー使用情報やアドバイスからなる「省エネレポート」を2018年3月末までに計4回配布する。この際、対象世帯を15万世帯ずつの2グループに分け、一方にはグローバルスタンダードのレポート、他方には日本独自のキャラクターを活用したレポートを送付し、その効果の差も検証する。

ナッジの初期の具体例''
ナッジの初期の具体例。米国でエネルギー事業者が省エネを呼びかけた際、左の3つのメッセージには全く効果が見られなかったが、右の「ご近所さんは既にやっています」は明確な効果が表われたという。この例から、ナッジとは要は「効果が出やすい広告/メッセージのテクニックを行動科学の手法を援用して工夫すること」だと理解して良いように思われる

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