NECを取り巻く大きな流れに沿った新野社長の思い
新野氏はなぜ今、住友の事業精神を講演で語ったのか。その意図について同社広報を通じて聞いたところ、同氏本人から次のような回答があった。
「NECがOrchestrating a Brighter worldを打ち出した際、その価値を提供する具体的な領域として7つの社会価値創造テーマを掲げ、これらを通じて未来社会も見据えながらお客様の課題に取り組み、社会課題の解決を目指す、社会課題起点で事業を考えていく、ということを申し上げた。一方で、国連も2030年に向けたSDGsを打ち出している。SDGsを達成するには国連やNPOだけでなく、企業としても事業を通じて社会の課題解決に向けて貢献することが求められている。このように、NECの7つの社会価値創造テーマとSDGsは親和性がとても高いことを示している」
さらにこう続く。
「Orchestrating a Brighter worldという企業ブランドメッセージを創った私たちの根底に流れる創業以来の住友の事業精神は、まさに今述べた世界の流れに沿ったものであるということを申し上げたかったものである。NECはこれからも100年、200年と生き続けられるように、この事業精神を大事に継承していきたいと考えている」
かなりの高尚な意図だとお見受けしたが、筆者が講演を聞いた際の印象を述べておくと、デジタルトランスフォーメーション事業の推進に向けて、NECはこれまでにも増してビジネスエコシステムの拡充が重要な取り組みとなる。その意味で、同社にとって住友グループは強力なビジネスエコシステムになり得る。事業精神を語ることで住友グループへのそんなメッセージも意図としてあったのではないか。
新野氏のコメントにある想いに比べると“ゲスの勘繰り”かもしれないが、いずれにしても同氏の強いこだわりを感じた講演での一幕であった。