古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」

歴史を変える「The Machine」の価値 - (page 4)

古賀政純(日本ヒューレットパッカード)

2018-01-18 07:30

都市交通の最適化、避難経路を即座に提示する未来のグラフ解析マシン

 現在、欧米に限らず日本でも、数学理論や定理をコンピュータのソフトウェアとして実装し、数理と情報を結びつけ、実社会に役立てようといった取り組みが行われています。たとえば、都市交通において、道路、交通ネットワーク、人、車、そして、過去から現在までの気象環境などをデータ化し、高速な計算システムでグラフ解析や最適化計算を行い、詳細な渋滞情報や最短経路を提示するシステムなどがあげられます。

 実社会での都市交通の制御や災害時避難誘導などへの活用が期待されています。このようなシステムでは、都市レベルで最適なオペレーションが実現するようにリアルタイムな分析と最適化を必要とするため、高度な数学理論とコンピューティングパワーが両輪で動かなければなりません。例えば、交通網や都市計画といった長期にわたるマクロな解析や交通管制といった中期的な解析などは、グラフ解析シミュレーションを行う専用の大型高速計算システムで比較的長時間にわたって計算を行います。

 しかし、災害時の避難誘導、避難経路の提示を行うシステムでは、リアルタイムに妥当な結果を返す実用レベルの計算手順(一般にアルゴリズムといいます)の考案と実装が必要となります。現実問題として、予算の限られた中小企業や自治体で専用のグラフ解析用の大型高速計算システムを購入して利用することは難しく、短期間での実装・運用は、困難です。長期的な交通網整備や都市計画、中期的な交通管制、災害時の避難誘導、街の情報提供、人の動きなどの可視化も含め、都市機能全体をパッケージ化しなければなりません。そのためには、非常に汎用的で、かつ、非常に優秀な計算手順(アルゴリズム)が実装されたコンパクトなグラフ解析マシンが必要になります。

 このようなグラフ解析は、現在の大型高速計算システムにおいて、複数の計算マシンで大規模なグラフデータを分散保持する必要がありますが、計算マシン間の通信が大量に発生する傾向が強く、できるだけ通信が発生しない効率的な計算手順が求められています。また、時間の経過とともに変化する人の行動、SNSにおけるユーザー同士の関係や発言内容、災害時における投稿写真、過去から現在までの人や自動車などの行動パターンなど、情報の真偽を含めて総合的に判断し、リアルタイムで瞬時に結果を出すことが求められます。The Machineならば、グラフ解析に必要なデータを全てメモリに取り込み、グラフ解析の得意なプロセッサによって、リアルタイム性を劇的に向上させることが期待できます。

 またThe Machineの光で結ばれた通信経路により、グラフ解析で発生する計算マシン間の通信量の増大の問題も回避できる可能性が大いにあります。過去から現在の都市や組織体の時系列での変化の情報をメモリ上に大量に保持しているため、過去に発生した都市災害や、組織におけるシステムの障害などの状況をThe Machine上で再現し、災害(障害)前の変化の予兆に関する「気づき」を人間に与えるようになるでしょう。


The Machineが描く近未来:「グラフ解析マシン」の実現

膨大なケースをリアルタイムにシミュレーションする未来の飛行機

 飛行機のエンジン1基が1時間に生成するデータ量は、数百ギガバイトから数十テラバイトにのぼるといわれています。このような膨大な情報は、一般に、データセンターに設置された超高速計算サーバで分析が行われます。たとえば、ボーイング社の「ボーイング787」では、1回のフライトで0.5テラバイトのデータが生成されます。ボーイング787が生成するこれらの巨大データは、2017年現在、HPEの水冷スーパーコンピュータ「Apollo 8000」と空冷スーパーコンピュータの「Apollo 6000」で分析を行っていますが、分析対象となるデータは、今も増加しつづけています。現時点では、これらのデータを事前にデータセンターに集めておき、まとめて計算を行う、いわば「バッチ処理システム」なのです。

 バッチ処理システムでは、データセンターのスーパーコンピュータに大量のデータを送信した後に一気に処理を行うため、飛行中の想定される膨大なケースをリアルタイムに予測することができません。飛行中のあらゆるケース(問題)を想定し、情報を検索・分析し、妥当な推定結果を出すためには、現在のコンピュータの場合、巨大なデータセンター自体を飛行機の中に作るしかありませんが、現時点でデータセンターを飛行機の中に収めることは、物理的に不可能です。データセンター内の巨大なコンピュータ群を飛行機に収めるためには、現在とは比較にならないレベルの集積度が必要になります。また、想定される膨大なケースを高速処理する能力も必要です。

 フォトニクスを駆使したThe Machineでは、現在の巨大データセンターの処理能力がカバンの中に納まるといわれています。また、さまざまなシミュレーション・モデルの中間結果は、The Machineのメモリ上に格納しておき、現在のコンピュータで何日もかかるような複雑なシミュレーション・モデルであっても、結果を出す時間は、数分というオーダーです。そうなれば、飛行機から発せられる巨大なデータをデータセンターに送信せずに、飛行機の中のThe Machineで分析・予測し、飛行中は、常に最適な(その時点で妥当な)状態に保つことができるでしょう。

 また、商用の航空便の20パーセントは、何からの問題により遅延が発生し、時間通りのフライトができていないといわれています。The Machineならば、発生し得るあらゆる「混乱状況」をシミュレーションし、問題が発生する前に対策できるでしょう。


The Machineが描く近未来:大量の複雑な問題を解く

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