古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」

歴史を変える「The Machine」の価値 - (page 5)

古賀政純(日本ヒューレットパッカード)

2018-01-18 07:30

分散メッシュ・コンピューティングがもたらす未来

 ITを駆使したオンライン小売業では、会員やウェブの閲覧者がウェブサイトのどこを見ているのか、ウェブサイトのどのボタンをクリックしたのか、さらには、インターネット通販におけるカートで商品をどれくらいの期間購入していないのか、といった情報をもとに、顧客の購買行動分析を行っています。ウェブサイトのクリック行動から、顧客に最も妥当と思われる広告をリアルタイムに表示し、購買の確度を高めます。

 しかし、オンラインではなく、物理的な店舗ベースの小売業では、店内のどの通路を顧客が歩いているのか、店内のどの陳列棚のどの商品を手にとって見ているのか、どういう種類の顧客が、どの時期に、どの商品を最も買うのかといった情報は、店員の接客能力、洞察力、地域ごとの慣習、流行、長年の経験による勘などに大きく依存する傾向があります。

 物理的な店舗における顧客の行動分析は、店員の接客スキルなどに売り上げが依存するのも事実です。そのような「勘と経験」に依存することなく、いつでも効率的な接客業務ができる仕組みが求められています。例えば、店内を歩く顧客の情報や行動などを店舗内のIoT機器やショッピング・カートなどからリアルタイムに収集します。収集した情報から分析を行い、得られた洞察は、自動的に店員の手元の端末に伝えられ、効率的な接客業務を行えるようになります。さらに、店舗内にいる会員顧客には、顧客の手持ちの携帯端末などに、リアルタイムに予測した顧客のニーズにマッチする商品情報やサービス情報を送ることで、購買に至る確度を高めるような次世代型の販促システムの仕組みが求められています。

 そこで、現在、研究されている基礎技術の1つが、IoT機器を駆使した「分散メッシュ・コンピューティング」です。この分散メッシュ・コンピューティングは、非常に小さいIoT機器(The Machine)が埋め込まれた身の回りのもの同士が情報を共有・交換します。店舗内に設置された監視カメラや人感センサ、顧客が持ち歩いている電子マネーを搭載した携帯端末、腕時計などのウェアラブル端末(個人の健康状態を把握するIoT機器)、店舗内のショッピング・カートなどがお互いに通信を行い、店舗内の顧客の歩行パターン、位置情報、購買履歴、他店舗の購買行動などの情報から、顧客の行動を予測するといったものです。

 身の回りの機器は、IoT機器として振舞いますが、The Machineが組み込まれれば、膨大な情報をThe Machine同士で連携し、即座に情報を人間に提供します。店舗内にいる店員は、IoT機器(The Machine)内に保持するビッグデータの分析で得られた「洞察」から顧客の行動パターン情報やニーズを得ます。ちなみに、HPE中央研究所には、模擬店舗があり、IoT機器を使った購買行動の実験を行い、分散メッシュ・コンピューティングの研究を行っています。

 The Machineを駆使した分散メッシュ・コンピューティングが実現できれば、さまざまな分野に適用できます。例えば、監視カメラを使った住宅警備システム同士が協調動作し、不審人物の有無だけでなく、カメラに写った人物の挙動から、その人物が不審人物かどうかを自動判定し、住宅の所有者や隣人などに自動通報するシステムなども考えられます。さらには、監視カメラだけでなく、工場などの産業機械同士が通信を行い、機械の故障・誤動作を示唆する情報を瞬時に得ることが可能になるでしょう。自動車、飛行機、携帯電話、家電、住宅など身の回りのモノにThe Machineが搭載され、相互に通信し、人間の脳のような知的な情報処理を自ら行い、人間に結果を即座に返す世界です。


分散メッシュ・コンピューティング:身近なモノにThe Machineが搭載され、相互に情報交換

 以上で、The Machineに関する全体像と2020年以降のThe MachineがもたらすITの未来像をお伝えしました。HPEは、世界で初めてメモリ主導型コンピューティングの実証実験に成功しました。実証実験成功に伴い、米国HPE本社が作成した動画があります。英語ですが、是非ご覧ください。

古賀政純
日本ヒューレットパッカード オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリスト
兵庫県伊丹市出身。1996年頃からオープンソースに携わる。2000年よりUNIXサーバのSE及びスーパーコンピュータの並列計算プログラミング講師、SIを経験。2006年、米国ヒューレットパッカードからLinux技術の伝道師として「OpenSource and Linux Ambassador Hall of Fame」を2年連続受賞。プリセールスMVPを4度受賞。現在は、日本ヒューレットパッカードにて、Linux、FreeBSD、Hadoop、Dockerなどのサーバ基盤のプリセールスSE、文書執筆を担当。Red Hat Certified Virtualization Administrator、Novell Certified Linux Professional、Red Hat Certified System Administrator in Red Hat OpenStack、Cloudera Certified Administrator for Apache Hadoopなどの技術者認定資格を保有。著書に「Mesos実践ガイド」「Docker実践ガイド」「OpenStack 実践ガイド」「CentOS 7実践ガイド」「Ubuntu Server実践入門」などがある。趣味はレーシングカートとビリヤード。

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