特許庁は11月21日、知的財産デュー・デリジェンス(知財DD)の手順を分かりやすく説明する標準手順書の策定のためにGitHubを活用したオープン検証事業を開始すると発表した。同日付でGitHub上にレポジトリが公開されており、12月28日までの約1カ月、幅広く修正案を公募する。
特許庁がGitHubに公開したレポジトリ
GitHubは、オープンソースソフトウェア(OSS)開発で広く活用されているバージョン管理システム「Git」のレポジトリをインターネット上で共有できるウェブサービス。著名なOSSプロジェクトがGitHub上で開発を行っていることで知られる。ソフトウェア開発者の共同作業を支援するプラットフォームだが、今回の実証事業では「標準手順書」というドキュメントの作成に活用する形だ。
ギットハブ・ジャパン エバンジェリストの池田尚史氏は、GitHubについて「プログラマーのためのSNS」であり、「ソフトウェア開発においてコードを共有したり、公開したりするためのサービスであり、コラボレーションプラットフォーム」だという。一方、インターネット上で広く開発者を募るOSS開発に限らず、企業内でのアプリケーション開発や政府公共機関などでも活用例があり、米国ホワイトハウスでも業務ソフトウェアの開発にGitHubを活用しているという事例を紹介した。
ギットハブ・ジャパン エバンジェリストの池田尚史氏
特許庁 法制専門官の足立昌聡氏
特許庁 法務専門官の足立昌聡氏は、今回の知財DD標準手順書オープン検証事業について説明。背景となる社会情勢として、かつては電機・通信業界で知財紛争の例が多かったものの、その他の業種業界ではあまり顕著ではなく、知財DDの手順について詳しい人材も少なかった。だが、現在ではM&Aの増加やさまざまな業界でITが活用されるようになってきたことで、知財DDに取り組む必要が増加してきたことを指摘した。
そのため、特許庁では「コンパクトかつ費用対効果に優れ、投資家のニーズと事業会社のニーズに基づいた、知財DDにかかる初のガイドライン(標準手順書)をインタラクティブに作成する」ことになったという。
同様の取り組みとしては、政府が法令・ガイドラインなどを制定する際に行う「意見公募手続」(いわゆるパブリックコメント)があり、この手続きのためのプラットフォームとして電子政府「e-Gov」がある。だが、こちらは原則的に1回限りの公開に対して意見を集める、という流れが前提となっており、意見を寄せた人同士で議論を深めるような状況は想定されていないという。
しかし、今回の知財DD標準手順書に関しては「行政庁や受託事業者に十分な知見がないことから、ユーザー間での議論と並行した開発が必要」となるため、コラボレーション・プラットフォームであるGitHubを活用することになったという。なお、同事業はNTTデータ経営研究所が受託し、公開されるGitHubのリポジトリの管理や有識者との意見交換などの事務局としての役割を担うという。
知的財産デュー・デリジェンスの位置付け