David Bowieとイノベーション
2002年、今は亡き偉大なアーティンストであるDavid Bowie(デヴィッド・ボウイ)は『音楽は水のようになり消費される』と言い放ちました。事実、フリーミアムの時代になりスマートフォンを通して音楽は毎日流れ落ちるようになりました。デヴィドの発言は当時、ほとんどの人が理解できなかった突拍子もないものだったはずです。彼はアーティストとしての考え方もイノベーティブでした。
「ロックを”利用する”と言ったのは僕が最初だろうね」
「僕はロックをメディアとしてとらえているんだ。」
天才的なアーティストとしての感覚は、筋道立った論理や既存のモデルをベースに考えたのではなく、直感として彼に訴えかけイノベーションを生み出します。直感をベースに考えることができる、しかも直感を前に進める実行力こそCDOの役割であると私は考えています。これからのデジタル時代の経営に必要なのは、こうした直感すなわち非連続的な変化を生みだす感覚なのです。今日は、そんなお話をしたいと思っています。
CDOの啓蒙者デビッド・マティソンとの出会い
David Matison(デビッド・マティソン)との出会いは私に衝撃と自信を与えてくれました。Matison氏はCDO Clubというデジタル分野における世界初の経営陣コミュニティの創始者です。世界各国のメンバーは5000人以上。つまりCDOの本質を知るキーマンなのです。彼は私が昔アーティストだったことを知ってか、こう問いかけてきました。
「エリック、世界で最初のCDOは僕がCDO Clubを創設する前から存在していたんだ」
謙虚な、しかし力強い視線で彼は続けました。
「考え方としてCDOが誕生したのは、音楽配信サービスのNapster、そして実際にその機能を企業に取り入れて革命を起こしたのは米ケーブルテレビのMTVなんだよ。」
ショーンパーカーはビジネス界のROCKスター、
NapsterはP2Pの技術を活用し各ユーザが所有している音楽ファイルをインターネット経由で共有できるサービスを考え出しました。当時、検索した楽曲が聴ける事の衝撃はものすごいものでした。私自身、夢のサービスとまで思ったほどです。しかし、少し考えてみれば当たりまえの事ですが個人のライブラリから流通する楽曲の90%は著作権を無視したもので、アメリカレコード協会の裁判で敗訴し、その力は弱まっていきました。
しかし、当時を振り返れば顧客視点ににマッチしたサービスはありませんでした。沢山の楽曲を聴ける環境がなかった時代、友達が持っている楽曲を共有できれば、さらに楽曲を共有できるコミュニティーがインターネットで世界中に広がれば、どれだけ沢山の楽曲に出逢えるのだろうと若者は誰もが思ったはずです。
最初に著作権問題から議論していたら絶対に生まれてこなかったサービス。しかも権利(著作権)を主張する大きな組織と戦うNapsterの反逆精神は、ROCKの精神そのもの。ここから、Sean Parker(ショーン・パーカー)というビジネス界のROCKスターが生まれたのです。既存の制約ではなく、直感的に面白い、ワクワクするという発想から、このビジネスは生まれたのです。