エリック松永のデジタルIQ道場

アーティスト視点で考えるROCKなCDO--エリック松永のデジタルIQ道場(5) - (page 2)

松永 エリック・匡史

2017-12-06 07:30

CDOとテクノロジ

 デジタルはテクノロジではない。イノベーションの発想は、必ずしも技術起点ではなく、あくまで顧客視点である事は、Napsterの事例を見れば明らかです。Napsterが起こしたののは、P2Pという技術の革命ではなく、音楽業界のイノベーションです。つまりCDO Clubマティソン氏がCDOの考えか方として言いたかったのは、

“CDOの中心的な役割はイノベーションを起こすことである。”

 と私は解釈します。

CDOの役割

 イノベーションを起こすのがCDOであれば、つまり、CDOは必ずテクノロジ出身である必要はないし、マーケティング出身である必要もないはず。では、CDOは企業のなかでどんな役割を担うべきなのでしょうか。

 CDOがレポーティングするCEOから求められるのは、CEOが発想できないようなイノベーション。実際にCDOが扱う対象領域はリアルも巻き込み非常に多岐にわたっています。実際にCDOとして活躍している人を見ても、非常にさまざまで、全ての企業に共通したCDOのファンクションというものはないと感じることもあります。企業にも個性があるようにCDOにも個性があります。乱暴な言い方をすればCDOについて定義づけをしようという事自体が古い考え方であり、デジタルに反していると言えるのかもしれません。

 イノベーションというキーワード以外の役割の定義は不要なのです。CDOには技術や業界、既成概念を超えたもっと広い意味で、できるだけ広い大きな世を見据えて考えることが求められます。そこには『この技術を使えば次に何ができる』といった連続的な変化ではなく、突拍子がない、前後の脈絡もない、前例もない、でもワクワクするような非連続的な変化が必要なのです。

 ちなみに、これまでの記事で、ミレニアル世代の経営者の台頭により、経営者にも直感的なイノベーティブな発想が求められてきているとお話しました。つまりCEOとCDOの役割は極めて近づいていると言えるでしょう。ここで注目なのはマティソン氏によれば、2017年にCDOからCEOに昇進したのは全米で100人を超えているという事実です。言い方を変えれば、CDOはデジタル時代のCEOの役割を定義づける重要な役割なのです。

追伸:

 Matison氏が最初のCDOの機能を導入した企業と言わしめたMTV。24時間音楽に浸りたい、アーティストの存在を映像でも感じたい、音楽の新しい楽しみ方でもっと楽しみたいと顧客視点で当時の音楽業界にイノベーションを起こしました。イノベーションが起きた瞬間は、1981年8月1日午前12時1分。放送開始、COOジョン・ラックによる第一声は、

"Ladies and gentlemen, ROCK and ROLL !"

ROCKでイノベーションをおこしましょう!!!

Peace out,

 
松永 エリック・匡史
青山学院大学 地球社会共生学部 教授

アバナード株式会社 デジタル最高顧問
青山学院大学国際政治経済学研究科修士課程修了
イノベーションをリードするデジタルコンサルティングの草分けであり、バークリー音楽大学出身のプロミュージシャンという異色の経歴を持つアーティストとしても活躍。コンサルタントとして、アクセンチュア、野村総合研究所、日本IBM、デロイト トーマツ コンサルティング メディアセクターアジア統括パートナー(執行役員)、PwCコンサルティング合同会社 デジタルサービス日本統括パートナーを経て現職。近書は「外資系トップコンサルタントが教える”英文履歴書完全マニュアル”」。

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