松岡功の一言もの申す

国立情報学研究所とLINEが共同研究するAIならぬ「RI」とは何か - (page 2)

松岡功

2017-11-30 11:00

RIは用途特化型AIより少し柔軟な知識基盤

 NIIとLINEによる共同研究というだけでも何か新しいものが生まれてくる期待感があるが、筆者が特に注目したのは、主な研究テーマとして挙げられたRobust Intelligence、通称「RI」である。直訳すると“強靱な知識・知性”という意味だが、いったい何なのか。出澤氏は、「RIはAIやビッグデータなどを包括的に扱う大きな概念を示している」と語ったが、何ともイメージが浮かばない。すると、喜連川氏が次のように説明した。

 「現状では何でもかんでもAIになってしまっているので、いろいろな解釈があるかもしれないが、私は今、利用されつつあるAIは基本的に用途特化型で、それぞれに特定の領域で学習すればするほど大きな効果を発揮するものだと認識している。ただ、一方で、そうした用途特化型AIだとその領域から少しでも外れた問いかけには、想定外と判断されて答えが返ってこないのが現状だ。それでは、日常生活において適用できないが、決められたことだけでなく、もう少し柔軟に答えを想定して力強く返してくれるようになれば、使えるシーンがいろいろと出てくる可能性がある」

 つまり、柔軟に答えを想定して力強く返してくれることを「Robust」と解釈した、用途特化型AIの上位になる知識基盤といったところか。ならば、将来実現するであろう「汎用AI」とはどう違うのか。会見の質疑応答でそう問われた喜連川氏は、次のように答えた。

 「汎用AIの実現への道のりはまだまだ遠い。RIは現在の用途特化型AIをもう少し柔軟に活用できるようにしようという発想だ。想定外の問いかけにすぐさま『分かりません』と答えるのではなく、的外れでない反応ができるようなイメージだ。ただ、私たちとしては汎用AIの研究と共通した意識があることも確かだ」

 喜連川氏によると、RIは米国のNational Science Foundation(NSF)という権威のある基礎研究促進団体が、先陣を切って普及に努めているそうだ。(図2参照)

 筆者のイメージでは、RIは柔軟性というより“融通が利く”AIといったところか。喜連川氏が指摘したように、汎用AIの実現までにはまだかなり時間がかかるとみられるだけに、RIが活用される可能性も大いにありそうだ。この言葉、皆さんもぜひ頭に入れておいていただきたい。


図2:RIを説明している米国National Science Foundation(NSF)のサイト

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]