イノベーションはチームワーク、Dellとの違いを強調
次期CEOのNeri氏は、Whitman氏の方向性を具体的に説明した。
HPEはハイブリッドITをシンプルに、インテリジェントなエッジ、それらを実現するサービスの3つの柱を持つが、Neri氏は「データ主導になるためには、これまでとは違うインフラが必要」とし、インテリジェントエッジ、高性能コンピューティング(HPC)、AI、スピードの4つの要素からHPEの戦略を説明した。
インテリジェントエッジでは、2015年にAruba Networksを買収しており、「モバイルファースト、クラウドファーストのアプローチにより、アプリケーションとデータで新しい体験を構築できる」とNeri氏。同時に、安全性への懸念に対応するため、セキュリティを全てのレベルに組み込んでいる述べる。その例が夏に発表した「Gen10」サーバ群だ。AIを利用したセキュリティ機能を組み込むことで、常に脆弱性を探すハッカーから保護できるという。
HPCは、データ量の増加という問題に対応するものだ。ここでは2016年8月にSGIを買収しており、「HPC分野でのリーダーポジションを確実なものにした」とNeri氏。メモリ主導コンピューティング「The Machine」プロジェクトにも触れ、「研究チームは4100ヨタバイトのデータに対応できると予想している」という。これは現在、世界に存在するデータの総量の250倍という。
AIは、「全てのプロセスと体験に組み込む」というのがHPEのアプローチだ。「管理、分析など全てのことをやる時間はない。高速に対応するには、システムが自ら考え、行動するようにトレーニングする必要がある」とし、効果的なAI活用を呼びかけた。HPEはここで2017年始めに行動分析のNiaraを買収している。その後買収したフラッシュストレージのNimble StorageはAI機能「InfoSight」を持つが、HPE Discoverの直前にInfoSightの拡大を発表している。
最後のスピードについては、AIに加えて、ソフトウェア定義を受け入れることで柔軟にリソースを構築し、管理するというもの。HPEはここでプライベートクラウド向けの「OneView」を持つが、HPE Discover Madridではマルチクラウドにも拡大した「OneSphere」を発表している。
技術戦略を説明した後、Neri氏はHPEの差別化を「技術パートナー」とする。EMCを買収したDell Technologiesと対比させるかのように、「1社では将来のエンタープライズを全て実現できない。イノベーションはチームスポーツだ」として、SAP、Microsoftなどの既存パートナーに加え、ベンチャー投資のPathfinder、クラウドサービス事業者コミュニティのCloud 28+などに触れた。Pathfinderでは、Mesosphere、Chef、Scalityなどの新しい技術を開発するベンチャーに投資しており、Cloud 28+はメンバー企業がこの1年で200社から約700社に増えている。HPEの顧客は、これらの企業のイノベーションも活用できる。
また技術だけなく、消費モデルも変化させている。HPEはすでに「HPE Flexible Capacity」として従量課金を導入しているが、HPE Discover Madridではこれを「HPE GreenLake」として再ブランドし、さらに強化した。
このようにITの複雑性を隠し、AIやソフトウェア定義により高速化、効率化し、使った分だけ支払うというのがHPEの描くエンタープライズの将来だ。2018年2月よりCEOとしてHPEを率いるNeri氏は、「アウトカムをサービスで得られる。このビジョンに向けた戦略がある」と顧客に語った。