田中克己「2020年のIT企業」

AIやIoTのビジネスモデル創出へのIT企業の課題--ガートナー考察から

田中克己 2017年12月05日 07時30分

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富士通やNECなど大手5社のITサービス市場シェアは5割を切る

 ガートナーによると、ITシステムの設計、実装・導入から運用・管理までのライフサイクル全体を対象とする国内ITサービス市場は16年に約11兆円となり、IT支出の3分の1を占める。内訳は、導入(40.9%)、ITアウトソーシング(31.6%)、製品サポート(11.4%)、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング、10.7%)、コンサルティング(5.4%)である。

 市場シェアは、富士通が13.2%(国内ITサービス売り上げ1兆4535億円)、NTTデータが9.3%(同1兆306億円)、NECが8.2%(同9068億円)、日立製作所が8.1%(同8973億円)、日本IBMが6.3%(同6948億円)で、上位の顔ぶれはこの10年以上変わっていないという。ただし、5社の収益構造は少し異なる。

 トップシェアの富士通は全方位に提供し、ITアウトソーシング(44.9%)と導入(46.3%)が売り上げの9割を占める。SE子会社を本体に吸収するなどし、デジタル対応のエンジニア育成を始めたが、課題はデジタル関連のサービス・デリバリと海外サービスの展開にある。人材リソースの再配置も課題になる。

 2位のNTTデータも、富士通と同じようにITアウトソーシング(43.9%)と導入(45.3%)から多くの収益を得ているが、金融と公共で7割近くを占める。課題は、クラウドを展開するNTTコミュニケーションズなどNTTグループ企業との棲み分けと連携だ。先端技術の研究開発を担うNTTの成果を、ユーザーのデジタル化にどう取り込むかもある。

 3位のNECは、ITアウトソーシングの売り上げ構成比が21.4%と上位2社の半分。半面、導入の構成比が61.4%と高い。強みは公共と製造向け中心のシステム開発と、顔認証などを駆使したセキュリティ・システムなどだ。課題は海外サービスの地域拡大とデジタルビジネスの展開にある。

 4位の日立も、ITアウトーソングが21.9%、導入が64.2%とNECに近い売り上げ構成になっているが、上位3社と大きな違いがある。物流や産業、電力といった実ビジネスを社内で手がけているので、自らデジタル化を実践できること。だが、他社同様にデジタルビジネスに必要なリソース配分に課題がある。5位の日本IBMは、総売り上げの78.3%をITサービスで稼いでいる。

 グローバルに占める日本の売り上げも13%で、北米に次ぐ規模だという。ITアウトソーシングが43.6%、導入が37.2%で、金融と製造が7割を超す。グローバルのテクノロジーやリソースを活用できる強みがあるものの、それを中堅・中小企業にどのように展開するかが課題になる。

 上位5社の合計シェアは45.2%で、5割を切っている。中尾氏は「大きな変化はない」というが、10年以上前の7割超時代を考えると、大手の影響力は低下している。クラウドへのシフトと、スクラッチ開発の減少に加えて、ニーズの多様化や案件小型化が響いている。

中堅IT企業もデジタル化対応に課題

 第2集団を構成するITサービス売り上げが、1000億円超の中堅IT企業は約20社ある。ガートナーによると、ここに入るのは、野村総合研究所(NRI)や日本ユニシス、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、新日鉄住金ソリューションズ、TIS、SCSK、NTTコミュニケーションズ、アクセンチュア、HPE、大塚商会、キヤノン、リコー、KDDI、東芝、トランスコスモス、富士ゼロックス、ベルシステム24、みずほ情報総研、三菱電機などで、合計シェアは34.1%になる。残りの20.8%は、中堅・中小のIT企業1万社が稼ぐ。

 中堅IT企業約20社は、得意な分野やソリューションがはっきりしている。例えばCTCは通信とサービスに、NRIは金融と流通にそれぞれ強い。セグメントでも、たとえばトランスコスモスはBPOに、リコーは保守サービスにそれぞれ強い。各社に共通する課題は、新しい顧客と市場の開拓にある。カギは、今持っている人材や技術、ノウハウを活かし、強いITサービスの派生的なサービスを生み出せるかだろう。

 中堅約20社も、上位5社と同様にユーザーのデジタル化対応にも課題がある。ユーザー企業と一緒になって、新規ビジネスを立ち上げて拡大させていく開発手法やマーケティングなどの機能を備えているかだ。デザイン・シンキングは1つになる。答えは、自らデジタル変革し、システム構築・運用やITアウトソーシングから、新しいITサービスへと構造転換を図れるかにもある。そのために、目先の案件にとらわれず、投資先の選択と集中をはっきりさせる。「あれも、これも」と少ない予算をバラマキ投資しても、効果が生まれるはずはない。

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