日本マイクロソフトは11月28日、都内にMicrosoft Azure(Azure)徹底活用フェス「Meet Azure Solution@渋谷ヒカリエ」を開催し、同日から2018年11月4日までの約1年間開設するAzureの体験型コミュニティスペース「Azure Antenna」の公開や、Azureの拡張機能となるAzure Stackの国内展開を説明した。
Azure StackはMicrosoftのハイブリッドクラウドプラットフォームを実現するため、AzureのIaaSおよびPaaSなどのサービスをオンプレミスに設置する"拡張機能"だ。常時ネットワーク環境を保持できない鉱山などの現場や、遅延問題が製品品質に大きく影響を与える工場、データをオンプレミスに保持しなければならない金融や医療といった場面での利用を想定している。日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&エンタープライズビジネス本部 本部長 浅野智氏はAzure Stackの特徴として、次に述べる4点を掲げた。
Azure Stackの特徴をAD(Active Director)とAzure ADを用いた「共通のID」、「統合された管理とセキュリティ」、オンプレミスならSQL Server、パブリッククラウドではAzure SQL Databaseを利用した「一貫性のあるデータプラットフォーム」、そして「統合された開発とDevOps」がポイントだという。「これまでアプリケーション開発時にクラウドとオンプレ用に違うコードを必要とする問題があった。Microsoft AzureとAzure Stackというハイブリッドクラウド環境では、同じアプリケーションを展開し、運用性の向上を実現する」(浅野氏)。ここがAzure StackとHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)と大きく異なる点だ。
日本マイクロソフト 業務執行役員 クラウド&エンタープライズビジネス本部 本部長 浅野智氏
発表会では、Azure Stackの国内採用表明企業として、2社の担当者が登壇した。三菱日立パワーシステムズは、「我々の顧客には自分たちでデータを保有し、パブリッククラウドなど外に出したくない顧客が多い。火力発電設備の運転を最適化する『MHPS-TOMONI』をクラウド経由で提供中だが、これをオンプレで実現するために、Azure Stackの検証を行っている。パブリッククラウドが持つセキュリティや認証、ログ管理などの自動化はコスト削減につながり、Azure Stackでも同様の効果を期待したい」(三菱日立パワーシステムズ デジタルイノベーション統括部 IT戦略企画部 部長 田崎陽一氏)と述べた。
三菱日立パワーシステムズ デジタルイノベーション統括部 IT戦略企画部 部長 田崎陽一氏(左)と同部 主任 石垣博康氏(右)
早期から検証に着手してきた三井情報では、さまざまな場所からコンピューティング能力を必要とする顧客向けに、Azure Stackを活用した次世代型ハイブリッドクラウドプラットフォームの提供を目指している。同社は「Azure上のアプリケーションをAzure Stack上で検証中だが、AD認証によるSSO(シングルサインオン)の利便性は大きい」(三井情報 デジタルトランスフォーメーションセンター R&D部 研究開発室 室長 青木賢太郎氏)と評価した。同社の顧客には膨大な集積データを流し込むネットワーク帯域の確保が難しく、クラウド活用できないケースが多い。そのため、Azure Stackで集積データを分析し、必要な情報だけパブリッククラウドへ流し込むような使い方が可能になるという。
三井情報 デジタルトランスフォーメーションセンター R&D部 研究開発室 室長 青木賢太郎氏