AIで金融機関の不正取り引きを浮き彫りに
現在、Teradataは顧客に対する資産構成サービスとして22種類のAIサービスを用意し、開発ステップに応じて3つに区分した「Velocity Service Portfolio」を提供している。日本テラデータが顧客に対するアドバイスや設計を行う「AI Strategy Service」「AI RACE」、デザインや実装段階になるとデータ収集から分析、基盤構築を実施する「AI Foundation Service」、そして作ったソリューションを継続的に回して顧客業務を改善していく「AI Analytics-as-a-Service」。「業務にAIを導入する際は具体的な設計が顧客の利益となるため、4段階のサービスを用意」(日本テラデータ Think Bigアナリティクス・データ・サイエンス・プラクティス ジャパン・プラクティス・ディレクター 津田高治氏)したという。
日本テラデータ Think Bigアナリティクス・データ・サイエンス・プラクティス ジャパン・プラクティス・ディレクター 津田高治氏
そのVelocity Service Portfolioを包括するのが、データ分析向けプログラムの「Agile Analytics Factory」だ。これまで述べてきたコンサルティングサービスなどを組み合わせ、顧客と協働しながらビジネス成果に結び付けるというもの。「重要なのは事例ベースの知的財産権。業種ごとの事例を議論の下敷き」(津田氏)にしながら、「Agile Analytics Factory」で開発したAI製品をPDCAサイクル的に改善する。また、AI開発から保守までの支援基盤となる「AnalyticOps Accelerator」や、後述する金融機関向け不正検知ソリューション「Financial Crime Accelerator」など、多数の支援策を用意する。
日本テラデータが導入事例の1つとして紹介したのが、デンマークの金融機関Danske Bankだ。同行は現行システムを用いても不正取り引きの検知率は70%未満となり、従来型の機械学習モデルを用いても、個別の取り引きは検知可能になるが、その関連性を浮き彫りにすることは難しいという。欧州はGDPR(EU一般データ保護規則)への順守が欠かせないため、事象の関連性を把握する必要があった。TeradataはHadoopやcassandraを用いたデータ駆動型アプローチで各種データを1つにまとめ上げ、不正取り引きに対するルールの自動生成や検知率の向上などを実現したが、この手法では不正の判断理由がブラックボックスになってしまう。
この問題を解決したのが、ローカル解釈可能モデルの「LIME」だ。深層学習による不正取り引きの検出結果に対して要因を提示し、ブラックボックス化の排除やGDPRへの対応を実現すると共に、同行では不正検出率の50%増加と誤検出率を60%以上削減している。さらに人件費削減にもつながり、「数百万ユーロ(数億円程度)のコスト削減と顧客満足度の向上をなし得た」(日本テラデータ Think Big アナリティクス クライアント・サービス ディレクター マット・マックデビット氏)。
日本テラデータ Think Big アナリティクス クライアント・サービス ディレクター マット・マックデビット氏
取り引きデータを画像に変換し、異常を検知。CNNやResNet、LSTMといったモデルを用いている
この他にもあらゆるデータ分析を可能にする「Teradata Analytics Platform」を拡充するため、JupyterやRStudioといったOSSやプロプライエタリの分析ツールと、非構造化データタイプへの対応を可能にするためAWS S3などへの対応。そして、2011年に買収したAster Data Systemを中核に沿えるロードマップを示した。「DWH(データウェアハウス)から先進的な分析基盤へ転換」(日本テラデータ エンタープライズ・データ・コンサルティング本部 ビッグデータ分析ラボ 部長 島田茂氏)するため、2018年上半期からの提供を予定している。
日本テラデータ エンタープライズ・データ・コンサルティング本部 ビッグデータ分析ラボ 部長 島田茂氏