ZDNet Japan 攻めのITセミナー

Dockerの俊敏性がビジネスのデジタル化を支える

ZDNET Japan Staff

2017-12-13 07:30

情報システム部門の役割に変化。ITインフラ管理の流れは“自動化”へ


朝日インタラクティブ ZDNet Japan編集長の怒賀新也

 AI(人工知能)や機械学習といった先進ITの華やかな側面が注目を集める昨今、それらの技術をビジネスで迅速に活用するためには、それを可能にする新たなITインフラが不可欠となる。その流れの中で期待を集めているインフラ技術がLinux軽量コンテナ「Docker」だ。朝日インタラクティブが2017年10月に開催したセミナー「“Docker”は攻めの一手になり得るか? 勝敗の決め手はIT部門がどう変われるか! 市場を攻略するための新方程式」(ZDNet Japan 攻めのITセミナー)では、ビジネスのデジタル化が進む中で変わりゆく情報システム部門の役割と、企業が守りから攻めのITへと転じる中でDockerがもたらすビジネス価値が明らかにされた。

 現在、Dockerが注目を集めている背景には、ビジネスにおけるITへの期待が変化したことがある。従来、ITは業務効率化や情報の記録を中心に使われてきたが、最近では新たなビジネス、あるいは利益を生み出すための武器としても大きく期待されているのだ。セミナーの基調講演に登壇した朝日インタラクティブ ZDNet Japan編集長の怒賀新也は、ITを取り巻く状況がこのように変化したことを説明し、次のように続けた。

 「これまで、IT担当者の主要な業務はインフラの構築や管理でした。しかし、今後はビジネスアイデアを素早くアプリケーションとして実現し、相互につなげていくことがより重要となり、インフラ管理については自動化によって負担を軽減していくのが大きな流れとなるでしょう」

 また、「ITの在り方が変わることで、情報システム部門はより上位のレイヤにあるアプリケーションへの注力を強める必要があるほか、ビジネスへの意識もより強くなる。セキュリティの重要性や部門を横断した経営視点を身に付けること、そしてインフラ管理からの解放などへの要求も高まっていくと思います」とも予測した。

 一方、日本ヒューレット・パッカードの古賀政純氏(オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリスト)と山中伸吾氏(HPEエバンジェリストリーダー HPE総合エバンジェリスト)が続いて登壇し、Dockerの特徴や、これを活用したITインフラ改善をテーマに講演を行った(これらのセッションの詳細については、レポート記事「Dockerを“攻めの一手”とするための企業ITインフラとは?」をお読みいただきたい)。

ビジネスのデジタル化でDockerを積極活用し、インフラ構築をスピード化

 最後に実施したパネル・ディスカッションには、古賀氏と山中氏に加えて日本パレットレンタルの黒岩暁氏(ICTサポート部 ICTサービスグループ グループ長)がパネリストとして参加し、「DockerはITをビジネス成長の武器にできるのか?」というテーマで議論を交わした。


日本パレットレンタル ICTサポート部 ICTサービスグループ グループ長の黒岩暁氏

 ユーザー企業を代表して登壇した黒岩氏が所属する日本パレットレンタルは、日用雑貨から加工食品、飲料など幅広い製品の輸送や保管に使われるパレットのレンタルを中心に事業を展開している。ビジネスのデジタル化へも積極的に取り組んでおり、パレットに貼付したICタグから収集した膨大なデータを分析し、物流の無駄を解析するためのアプリケーションを自社開発するだけでなく、これを社外にクラウドサービスとしても提供しているという。

 その一方で、同社は多くのレガシーシステムも抱えている。「それらはデジタル化のためのシステムとは別に運用しているのか」という山中氏の質問に対し、黒岩氏は次のように回答した。

 「レガシーシステムはWindows系アプリケーションが多いですね。一方、デジタル化のための新たなアプリケーションはLinuxベース、オープンソースベースで作っていますが、今はそれをいかに効率化するかが私たちの大きなテーマとなっています」

 その効率化を実現するために、Dockerも積極的に活用しているのだという。

 「Dockerの便利さは身に染みています。使ってみるとよく分かりますが、本当にあっという間にインフラを作れるんです。先日も、データベースの負荷テストを行う際にDockerを使いました。負荷テストなので沢山のクライアントノードを作る必要がありますが、これをハイパーバイザーで作成すると結構面倒です。そこでDockerを使ったところ、瞬く間にテスト環境を整えることができました」(黒岩氏)

これからの情報システム部門はプロフィット・センターに


日本ヒューレット・パッカード HPEエバンジェリストリーダー HPE総合エバンジェリストの山中伸吾氏

 なお、ITを活用して新たなビジネスを創出する、あるいは外部に提供するサービスを開発する際には、これまで以上にコストやスピードが重要になる。その中におけるDockerなどオープンソース・プロダクトの活用について、黒岩氏は次のように話す。

 「私たちは、社外のお客様向けのシステムも開発しています。これらは採算性を考慮しないとビジネスとして成り立たないため、OSやデータベースに関しては高額なライセンス料が発生する製品は使いづらく、自ずとオープンソースに流れます。また、提供スピードも求められるため、Dockerなどの技術を積極的に活用するという流れになってきていますね」

 これを受けてコメントした山中氏は、「売り上げを立てる、採算を取るということを考慮すると、自社内で作り、その中でオープンソース・プロダクトを活用するというかたちに自然になっていくということですね」と話し、今日、多くの企業でデジタル化に向けた取り組みが活発化する中で、Dockerをはじめとするオープンソース・プロダクトの活用がさらに広がるだろうとの認識を示した。


日本ヒューレット・パッカード オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリストの古賀政純氏

 一方、古賀氏は「企業の活動を活性化させるうえで、情報システム部門はますます重要な部署になっていく」と指摘。今後はコストセンターから脱却し、プロフィット・センターになっていかなければならないとの認識を示したうえで、次のようにコメントした。

 「ビジネスを新たに生み出していくためには、ITの力が不可欠です。そのとき、どんなテクノロジーが必要なのかを最も理解しているのが情報システム部門です。Dockerは、新たなビジネスを生み出すための道具の1つとして捉えていただけばよいと思います。また、こうした役割の変化を情報システム部門も認識し、経営層としっかりとコミュニケーションを取りながらビジネス価値を生み出すための活動を進めていくことが重要になるでしょう」

 パネリストらが強調するように、ビジネスのデジタル化が進む中で、情報システム部門が果たす役割や業務の内容は今後大きく変わる。その中で必要となるITインフラをどう作るのか、あるいはスピーディにサービスを提供していくうえで何が必要なのかを考えたとき、Dockerが極めて重要な技術となることは間違いなさそうだ。

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