ビッグデータについては、小売企業はほかの業種の企業よりも多くの情報を持っている。しかし、英国の大手百貨店House of Fraserの最高情報責任者(CIO)Julian Burnett氏は、情報の量が多いからといって、得られる知見の水準が上がるとは限らないと考えている。
「小売業界は長年の間、直感に従って商売をしてきた」と同氏は言う。「しかし、意思決定を裏付ける、成功の可能性を示す根拠が得られるかどうかが重要だ。私は、わが社のデータセットで、意思決定を行う従業員に、適切に情報を提供できていると自信を持っている」
この記事では、Burnett氏がHouse of Fraserでどのようにビジネスインテリジェンス(BI)を活用しているかについて述べつつ、戦略の立案、知見を活用する能力の養い方、人工知能(AI)を含むイノベーションの活用に関するベストプラクティスについて説明する。
1.効果的にデータを利用するための戦略立案
Burnett氏は、BIに対して投資したことで、直感ではなく根拠に基づいて意思決定できるようになったと述べている。
Burnett氏がHouse of FraserのCIOに就任したのは2015年10月のことだ。同氏は技術部門を強化するにあたり、BIを扱う能力に重点を置き、経験豊かな専門家を雇用した。同社は当時、すでにMicroStrategyのBIソフトウェアを使用していたが、そのテクノロジを十分に生かせていなかった。
Burnett氏は、CIOに就任した際に、ある質問を使って同社の状況を把握しようとしたという。同氏はほかの部門に対して調査を実施し、「何人のスタッフが、1日にいくつのレポートを利用しているのか」を尋ねた。「この質問に対する答えは、状況がどの程度混乱しているかを示す指標になる。わが社の場合、中央組織の800人のアクティブユーザーが、1日あたり1万8000本のレポートを利用していた。これでは情報が多すぎて、効果的には利用されていない可能性が高いと考えられた」
Burnett氏によれば、この問題を認識したことで、知見を生み出すことについて大きなチャンスを明確にできたという。同氏はデータフローの整理統合と改善を進めつつ、どうすればMicroStrategyが提供するデータ可視化ツールで、より満足度の高い情報を提供できるかを考え始めた。