中国ビジネス四方山話

中国のネットの巨人もAR・VR普及に試行錯誤

山谷剛史 2017年12月14日 07時30分

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 来年の中国ITにおいてどんなサービスが台頭するかという質問に対して、無数のスタートアップ企業の候補を出すことはできるが、はっきりこれと答えるのは難しい。ここ数年の中国ITの代名詞たるシェアサイクルや電子決済だって出るまでは今日の様子を想像することすらできなかった。

 中国IT大手のBATJこと百度(バイドゥ)、阿里巴巴(アリババ)、騰訊(テンセント)、京東(ジンドン)なら、スタートアップ企業より資金面で潤沢であり、本気で普及させようと思えば資金を投入してある程度のごり押しができるし、してきた。だがVRやARは利用者のハードルが高いのか、新サービスに対して満足感というか継続して使いたくなる気持ちが高ぶらないというのだろうか、ユーザーは食いつかずなかなか普及しない。

 いや、スマートフォン用のVRゴーグルについては2016年前半には安価でばらまかれ、ある程度欲しい人には回り、多少関心も持たれた。しかし検索数の傾向を示す「百度指数」によれば、その後一気に関心は引いていったことがわかる。PC用VR体験店が中国全土のショッピングモールにできたが、誰も利用していない店舗を見ることがよくあり、どうも人気という感じはしない。かつて最新テクノロジに食いついてきた中国人を見てきた身としては、どうも消費者の反応は鈍いように見えてならない。

 一方、企業側の機器やコンテンツの研究開発は続いている。12月上旬に浙江省鳥鎮で開催された世界互聯網大会では、テンセントをはじめとした企業が関連機器やコンテンツをお披露目した。コンテンツについては、テンセントが中国国内外の博物館や美術館などにある文物をデジタル化し、VRやARで表現しようとする「VR博物館データベース」を展示した。VRを活用したゲームも開発されているが、いわく「どれも既視感がある」とはユーザーの声。

 ARはどうかというと、今月にはテンセントの学生層に人気のチャットアプリ「QQ」のAR識別機能に対応した英語の教科書が発表されている。支付宝(アリペイ)をリリースするアリババ系のアントフィナンシャルは今年の年初に、春節期間にポケモンGoのようなARを活用してお年玉ポチ袋を探すという「実景紅包機能」を追加したものの、過去にアリペイの電子決済を普及させるために金をばらまいた手法ではあるが、しかし利用した人はあまり聞くことなく、7月にサービスを終了した。

 ECとVRを融合するとは言い続けてきているし、今後の目標にも挙げているが、口コミとして広がりそうな利用者の声は聞こえない。ARは子供向けの教育コンテンツだけは商品としてしばしば見るが、そこから抜け出していない感じがする。

 コネクテッドカーの研究を進めているアリババは、その関連会社から2018年を目途に車載ARナビゲーション兼エンタメシステムリリースを目指す。アリババは今年ホログラフィックARディスプレイのWayRayに1800万ドルの投資を行うことを発表した。これによりWayRayと、アリババと中国自動車メーカー「上海汽車」との合資企業「斑馬科技」とWayRayが提携して開発を進めるとのこと。

 アリババとテンセントはまた、それぞれがチャットとARの融合を試みている。自分のアバターとなるキャラクターをARで表示し、それでチャット相手とスタンプを送り合うように様々な互いのアクションを出し合うというものだ。テンセントは自社のチャットサービス「微信(WeChat)」の拡張機能的なアプリ「微信電話本」でアバターによるARチャット機能を搭載。スマートフォンのカメラで撮影し、デフォルメされたアバターを作り出す。またアリババも中国各地のショッピングモールに3Dスキャナーを設置し、自身のアバターを作ってもらい、ネットサービスで活用してもらうという計画を考えている。ただうがった見方をすれば、中国のネット企業はこれにより国民の頭部や身体データまで把握するかもしれない。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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