しかし成功のために必要なのは、役員会との強い結びつきだけではない。Lourens氏は、ITをビジネスの言葉に翻訳する能力が、ITリーダーが成功するための重要な資質だと述べている。また、見過ごされがちな要素に、IT部門のスタッフたちとの結びつきの強さがある。
「わたしの考えでは、ITチームと個人的に話ができることが重要になっている」と同氏は言う。「ITリーダーは話しやすい存在でなくてはならず、ITチームと会話の機会を作る必要がある。わたしはチームの全員と話すようにしている。3カ月を1つのサイクルとして、IT部門の全員と1対1で話をしている」
Lourens氏は、アジャイルの手法を熱心に取り入れている。同氏は、チームと一緒に振り返りの作業を行う際にアジャイルの手法を使っており、スタッフはその場で不満について率直に話し、Lourens氏も自分の懸念について話しているという。Lourens氏は、この緊密なやりとりがあるからこそ、同氏が経営会議に参加しているときにもチームの一員でいられると述べている。
「IT部門のスタッフたちに、CIOは戦略を決め、大風呂敷を広げるだけの人間だと思われてはならない。スタッフが懸念している問題についても話せると思えるように、率直でオープンな会話をすべきだ」と同氏は言う。
「そのオープンさがエンパワーメントを促進し、スタッフたちに自分が会社の一員であるという感覚を与える。わたしにとっては、チーム内でのコミュニケーションは何よりも大切だ。チームなしではCIOの仕事は何1つできないのだから」(Lourens氏)
3.同時通訳の達人になる
リーダーシップに関する文献の多くは、CIOは事業部門との関わりに力を入れるべきだとしている。しかし大手小売企業CarrefourでグループCIOを務めるRenaud de Barbuat氏は、ITリーダーは組織内でのコミュニケーションの重要性についても忘れてはならないと述べている。ITをビジネスの言葉に翻訳することは重要だが、ITスタッフに明確な説明をすることも同じくらい重要だ。
de Barbuat氏は、ITリーダーは「同時通訳」が得意でなければならないと述べている。CIOは、テクノロジの価値を企業の大局的な目標と結びつけて説明するとともに、ITチームに対しては、ビジネスの目標を達成するために、どう技術的な仕組みを作っていくかを説明しなくてはならない。
「ある意味では、これはコインの裏と表のようなものだ。片面はビジネスで、もう片面がITだ」とde Barbuat氏は言う。「CIOは技術的な課題をビジネスの言葉に翻訳することに長けている必要があるが、その逆も必要とされる」
de Barbuat氏によればCIOの役割は複雑で、ビジョンを示すことができると同時に、プロジェクトマネージャーや、運用のスペシャリストの役割も果たさなければならない。同氏は、チームを率いてビジョンの提示から実行まですべてを行うことは非常に難しいことだと述べている。
「現在のCIOは、多くの意味で小さなCEOのような役割になっており、わたしはそれを楽しんでいる。われわれはデジタル変革の中心におり、これは非常に刺激的なことだ。ビジネス上の課題とチームプレイの両方をこなす必要があるこの仕事は、非常にやりがいのある仕事だと言える」とde Barbuat氏は言う。
「ITによるイノベーションは、当社のビジネス戦略においても重要な役割を果たしており、未来の店舗には、画像認識から音声による会話、ロボット、ブロックチェーン、モノのインターネット(IoT)に至るまで、さまざまなテクノロジが関わる可能性がある。現代の小売店の可能性に取り組むことは、極めて興味深く刺激的な体験だ」(de Barbuat氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。