AIによるエコシステムに関する議論・検討においては、分科会でも提案しているが、以下の取り組みが重要であると考えている。
AIに関するポジティブインパクトに関する議論・検討
AIの普及が進んでいくと、AIによるプライバシー問題や雇用を奪われるなどのリスクの議論に目がいきがちではあるが、AIビジネス成長を後押しするポジティブインパクトにも重点を置き、議論・検討をしていく必要があると考えている。その過程でビジネスや開発を後押しするリスクスタディや制度面などの議論・検討も重要となっていくだろう。
射程とする範囲および取り扱う分野・取組の明確化
AIによる議論は時間軸によって議論の内容も大きく異なる。2030年を軸として、それまでの技術進展予測、ステークホルダーの役割の進展を整理しつつ、社会課題を解決やビジネスを創出するAIエコシステムのあり方と影響評価を議論するというアプローチもあるだろう。
取り扱う分野では、コンシューマ分野では話題となっている「スマートスピーカー」、産業分野では自動運転車やコネクテッドカーでさまざまなイノベーション創出が見込まれている自動車産業などの、ある程度焦点をあてて議論していくことが望ましいと考える。
AIシステムの相互連携とICT活用の在り方の検討
AIが普及するとさまざまなレイヤでシステムの相互連携、データドリブンのサービスレイヤによるエコシステムが形成されるようになるだろう。こういった相互連携が進む中において、2020年以降の実用化が見込まれている次世代移動通信「5G」やAI基盤などのICT活用やインフラあり方など、議論・検討する選択もあるだろう。
特にAI関連のソフトウェアやサービスは、マシン側のAI Defined Machineやエッジ側のエッジAIコンピューティング、ネットワーク側のAI Defined Infrastructureなど、さまざまなレイヤでAIが相互に連携していく環境整備も重要となっていくだろう。
AIの実用ビジネスの加速にともない、さまざまなレイヤやコンシューマから産業分野でさまざまなエコシステムが形成されていくだろう。2018年もさまざまな視点で、AIネットワーク社会におけるエコシステムのあり方を整理して発信していきたいと考えている。
- 林 雅之
- 国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。