こうした取り組みが、Avayaの顧客企業が自社のユーザーに対して優れた“体験”を提供できると同氏は語る。その一例が、トルコの次世代救急サービスプロジェクトだ。
同国では車両緊急通報システム「eCall」に、AvayaのCCシステムを採用している。eCallは、緊急救助を要するような自動車事故の発生時に自動通報できるシステム。
トルコでは音声によるコミュニケーションのほか、緊急救助対応側に事故現場の正確な位置情報や事故車両の状況をeCallを通じて自動で送信する。事故データを関係各所と共有することで迅速な救助活動が進められるというわけだ。
クラウドで日本の中小企業にアプローチ
もう1つ、Chirico氏が「注力分野の1つ」と掲げるのが「サービス」である。ネットワーク機器からCC/UCといったソフトウェアにビジネスの軸足を移してきたAvayaだが、今後はプロフェッショナルサービスのメニューを充実させていくという。具体的には「Avaya Private Cloud Services」や専門性の高いカスタマーアプリの運用支援などだ。
現在、CC/UCのソリューションはさまざまな業種業界で、これまでとは異なる目的で利用されている。Chirico氏は「ヘルスケアや金融分野などでは、その業界に特化したアプリの開発、運用が必要になる。(CC上で)どのような機能を持ったアプリが求められるのか、他のアプリとの連携で何ができるのか。これまで『プラットフォームの提供』レベルだったものを、(その上で稼働する)アプリとその運用といったサービスレベルまで網羅する形で提供していく。ニーズは必ずある」と説明する。
Private Cloud Servicesは、プライベートクラウドやパブリッククラウド、オンプレミス環境で提供するシステムを顧客の運用環境にあわせてリモートから管理するサービスだ。
特にChirico氏がクラウドサービスに期待するのは、日本市場での展開だ。システムの運用管理をクラウドサービスで補完できるのであれば、これまでUCの導入に二の足を踏んでいた中堅小規模企業でも可能性はある。Chirico氏は「同サービスは(システムの)可用性と冗長性を実現するだけでなく、IT運用管理者が十分でない企業にとっても有益なサービスとなる。日本市場ではパートナー企業と協力し、中堅・小規模企業の市場にも積極的にアプローチしていきたい」と展望した。
CC/UCで収集されたデータを分析すれば、顧客満足度だけでなく顧客の嗜好性やライフスタイルなども理解できる。ちなみに「分析したデータをもとにした新たなビジネスを立ち上げる予定は?」との質問には「“現時点”では何も言えない」と含みを持った回答を得た