大量生産・消費が前提のGDPありきではない社会へ
とはいえ、同じ調査においてシェアリングエコノミーの内容を説明した上で日本の経済・社会に与える影響を聞いたところ、約6割が「影響があると思う」と答えた。さらに、その影響の内容を図1にある7つの項目から選んでもらったところ、3つが25%を超える結果となった。野口氏はこの結果に、「無駄な生産や消費を減らすのは予想できたが、イノベーションの創出や働き方が変わるとの回答も多かったのは、直感的にそう受け止めた消費者が少なくなかったのだろう」と語った。

図1:シェアリングエコノミーが日本経済・社会に与える影響(出典:PwCコンサルティングの資料)
では、日本でのシェアリングエコノミー発展の可能性はどうか。野口氏は2つの大きなドライバーがあるという。1つは、2020年の東京オリンピック開催による訪日外国人の大幅な増加が見込まれることだ。これによって、宿泊や移動への需要が拡大するだろう。もう1つは、デジタルネイティブなミレニアル世代が増加することだ。これによって、シェアリングサービス市場は一層活況を呈するだろう。
その一方で、同氏はシェアリングエコノミー発展の課題として、「既存業界の懸念」「規制緩和のスピード」「品質問題」「労働問題」といった点を挙げた。
その上で、同氏はシェアリングエコノミーの未来に向けて、図2のように「社会課題の解決」「共有意識の加速」「テクノロジの進化」といった3つのキーワードを挙げた。

図2:シェアリングエコノミーの未来(出典:PwCコンサルティングの資料)
まず、社会課題の解決については、地方創生の格好の取り組みになり得るとともに、働き方の意義を問うものになると指摘。共有意識の加速では、例えば、品質と価格のトレードオフにおける経済合理性の変化、PtoPの台頭やSNSを用いた信用の裏付けによる個人パワーの増加が顕著になるとした。
そして、テクノロジの進化というのが、すなわちデジタル技術である。図2では人工知能(AI)、ブロックチェーン、3Dプリンタが挙がっているが、「これまでシェアリングエコノミーが拡大してきたのは、何と言ってもスマートフォンの普及が大きい」と同氏は強調した。
さて、ここまで野口氏の話を聞いて、筆者の頭には気になる点が浮かんできた。それは、シェアリングエコノミーはさらなる経済成長につながるのか、だ。そもそもこの新たな経済は、大量生産・大量消費を前提にした現在の指標である国内総生産(GDP)を押し上げる効果はあまりない。となると、経済成長だけでなく、どんな社会を目指すのか。
この質問を野口氏にぶつけてみたところ、「シェアリングエコノミーは経済構造、ひいては社会構造を根底から変えていく動きになり得る。GDPについてもこれから全く違った尺度を考えていく必要があるだろう」との見解を示した。
改めて2018年のスタートに当たり、「シェアリングエコノミーでどんな社会を目指すのか」、さらに「その社会を目指す覚悟が私たちにあるのか」と、一言もの申し上げておきたい。