2018年のビッグデータ業界について予想するにあたり、まずは業界を取り巻く背景を整理するところからスタートしたい。
まず人工知能(AI)の影響は無視できないものになっており、この件には地政学的な問題から、社会的な問題や予想外の応用方法まで、さまざまな問題が絡んできている。またIoTが、家の中、病院の医療、自動運転車の運転、工場の運営、スマートシティの管理など、あらゆることに影響を強めていることも見逃せない。さらに、欧州連合(EU)の一般データ保護規則が2018年に施行されることも、データレイクやクラウドストレージなど、あらゆる場所に保管されたデータ対して、プライバシーや国家主権の面から影響を与える。
一方その水面下では、企業のクラウド管理やストリーミングアナリティクス、データレイク戦略などについての地殻変動が始まっている。
マルチクラウド対応が最優先課題に
今後を予想するにあたって、まずはデータの管理に焦点を当てよう。1年前の米ZDNetの記事では、「IoT由来のものか、従来の情報源からのものかを問わず、ビッグデータはクラウドでリアルタイムに処理されるようになっていく」と述べている。その際、新たに生まれるビッグデータワークロードの35~40%がクラウドに展開され、2018年末までにその割合は50%を超えると予想した。
この予想はそれほど外れていなかった。Ovumが実施した、全ビッグデータワークロードを対象とする最新の世界的な調査では、全体の27.5%がすでにクラウド上に展開されているという結果が出ている。調査によれば、企業のクラウド導入状況はワークロードの種類によって26~30%であり、ビッグデータに関する数字は全体から見ても大きく外れているとは言えない。
従来からの流れもあり、多くの企業のクラウド環境は、自社のデータセンターの環境を反映した、多様性のあるものになっている。オンプレミスの場合と同じように、多くの企業は複数のクラウドプロバイダーを利用している。歴史は繰り返すと言うが、この状況は会社としての標準を決めようとするトップダウンの方針と、その時々で行われた各部門独自の判断の組み合わせによって生まれたものだ。
例えば買掛金勘定の処理にはSAPを使い、人事にはWorkdayを、CRMにはSalesforceを使っている会社もあるだろう。あるいは合併・買収(M&A)の結果、社内にまだ集約されていない複数のERPシステムが存在している会社もあるかもしれない。クラウドサービスでは、電子メールサービスには「Office 365」を使っている一方、ある部署の開発チームではAWSの「開発とテスト」を使い、マーケティング部門は「Google Analytics」を使っているかもしれない。