Qualcommでは、Centriq2400のFalkorコアを進化させた「Saphira」コアの開発にも着手している。Saphiraコアを使用したCentriq2400の後継プロセッサが「Firetail」だ。同社には、Firetail以降のサーバ向けARMプロセッサの計画もある。

QualcommはFalkorコアの次世代となるSaphiraコアの開発を進めている。Saphiraコアを採用する次世代サーバプロセッサがFiretailだ(同)
ARMプロセッサはサーバ分野で成功するのか?
ARMプロセッサ向けのOSはLinuxになる。ただしCanonical、Red Hat、SUSE、CentOSなどの各ディストリビューションでもARMプロセッサ向けのLinuxがリリースされている。Microsoftは社内のプライベートクラウドでWindows Serverの一部機能をインプリメントして運用しているが、現状ではARMプロセッサ版のWindows Serverを製品としてリリースする予定はないようだ。
だが、ARM版のフルスペックのWindows 10がリリースされることを考えると、サーバ分野でニーズが出てくれば、ARM版のWindows Serverがリリースされるかもしれない。ただ、製品として提供されるよりも早い時期(2018年から2020年までの間)に、Azureのハードウェアインフラとして採用されるとの予想もある。
ハイパーバイザでは、LinuxのKVMやXenなどがサポートされ、最近注目されているコンテナ化テクノロジのDockerもサポートされている。しかし、VMwareのESXiなどはサポートされていない。
プログラミング言語はGCC、Java、Open JDK、Python、PHP、Node.jsなど多くの言語がサポートされ、この他にはOpenStack、Cloud Foundry、Kubernetes、Mesosなどのクラウド プラットフォームや管理ツールなどもARM版が出ている。データベースやビッグデータなどはMySQL、MongoDB、Hadoop、Memcached、Spark、Cassandra、NGINX、Tomcat、OPNFVなどがサポートされている。
これらのソフトウェア環境は、Linuxを中核としたオープンソースが中心となる。逆にいえば、Linux以外のOSはARMプロセッサをサポートしておらず、Oracleなどの商用データベースなどもARMプロセッサをサポートしていない。現状でARMサーバは、Linuxとオープンソースソフトウェアを利用するためのハードウェアプラットフォームになるだろう。

Linux OSと各OSSのフレームワークがそろっており、OSSを使う上では大きな問題はない。ただし商用ソフトウェアの数は少ない(同)
ARMサーバがすぐに企業サーバとして採用されるかといえば、非常に難しいだろう。始めはパブリッククラウドなどで採用されると考えられる。また、企業のミッションクリティカルサーバではなく、ビッグデータやAIなどの用途にフォーカスしたサーバとして採用される可能性がある。
特にARMプロセッサの低消費電力性を生かし、AIに利用する複数枚のNVIDIAのGPGPUカードなどを1台のサーバに搭載するといったことが可能だ。AIを積極的に活用していく企業では、AIの処理にフォーカスしたサーバ群が必要になる。こういった用途に低消費電力のARMプロセッサが有利かもしれない。また、AI関連のフレームワークや開発ツールの多くがLinuxのオープンソースソフトウェアとして提供されているのも、ARMプロセッサにとってメリットになるだろう。