展望2020年のIT企業

Leonardoとデザイン思考を活用するSAPジャパンの狙い - (page 2)

田中克己

2018-01-16 08:37

Leonardoのスキルをパートナーに移転

 SAPはLeonardoに必要なスキルを、パートナーに無償で移転もする。「作業を得意とする企業とは組まない。ビジネスプロセスをデザインするパートナーになる」(福田社長)とし、世界ではアクセンチュアやデロイトなど、日本では富士通などをパートナーにする。2017年10月に日本で開催したパートナー会議には50社超が参加したという。

 Leonardoに先行するデジタル思考を適用した事例は、急速に増えている。「国内で3ケタ、日本製紙や在サンフランシスコ日本国総領事館などシリコンバレーを活用したケースが30件以上になる」(福田社長)。ちなみに、在サンフランシスコ日本国総領事館は2017年9月、2020年に訪日外国人4000万人を達成するためのワークシップを開催したおり、SAPが協力した。シリコンバレーのSAPアカデミーで教育を受けている世界約30カ国のSAPの若手社員約160人とSAPラボの研究者約10人、日系企業の現地支社から数十人、それに国内の電力や交通などのSAPユーザーらが議論に加わった。「アイデアはたくさん出たので、どうするか検討している。当社の役割はアイデアをすばやくプロトタイプへと展開する、いわば夢を形にすること」(福田社長)。

 海外の事例も紹介する。空港における利用者のイライラを解消と新しい体験を提供すること。具体的には、オペレーションセンターが旅客機の遅延、セキュリティゲートの顧客数、ゲートの追加状況、売店の売り上げ、駐車場の利用状況などを監視し、例えばゲートを通過したものの、乗る旅客機が遅延になったら、売店がある商品の割引情報をスマホに流す。

 こうしたデザイン思考やLeonardoを採用するのは、危機感のある企業が多いという。例えば、アマゾンが攻めてくる前に、ビジネスモデルをどう変えるか悩んでいる企業だ。「企業風土を変えるなど、前例のないことにチャンレジする」(福田社長)。そのためには、社内の部署を動かせて、いままでにない方法を実行できるような責任のある人物が企業側に欠かせない。

 福田社長は「当社は価格ではなく、バリューで勝負する。今のシステムが古くなったので、変えるというものではない」と、新しいIT企業を目指す考えを熱く語る。もちろん、SAPはそれに応える課金モデルなどのサービスやソフトをそろえているという。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

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